松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹の、記念すべき全米プロ。
4位より、やっと戻った笑顔を喜ぶ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/08/02 11:40
松山英樹は、不調だと表情が動かなくなり、口数が減る。この笑顔が、彼の復調を雄弁に物語っているのだ。
予選突破に珍しく「結構うれしい」と吐露。
だから、このバルタスロールにやってきたときは、練習と試合ですっかり変わってしまう自分のゴルフと自信、そのギャップをいかにして縮めるか、まずは予選を通過できるか、それが彼の課題だった。
そして、初日1アンダーとまずまずの発進を切り、2日目は3アンダー、67で回って9位で予選通過。
「結構うれしい」
4日間の中間地点までやってきたとき、松山のゴルフにも笑顔にも、すでに“らしさ”が戻りつつあった。だが、まだまだ気が抜けない状況であることを彼自身が感じていた。
「もうちょっと伸ばしたかったけど、いつ崩れるかわからない」
「ドキドキしながら回ってた」
「上位に行くには、まだ足りない」
期待と不安をどう咀嚼していくか。決勝ラウンドの36ホールに彼が自ら掲げた課題は、メジャー初優勝やメジャー最高位の更新より何より、本来の自分のゴルフを取り戻し、それが「フツーです」と言える本来の松山英樹に戻ることだった。
「フツー通りにやれたら、いいな」
36ホールを回った日曜日。第3ラウンドで3つスコアを伸ばした松山は、首位のジミー・ウォーカーから4打差の5位という好位置で最終ラウンドを迎えたが、メジャー初優勝を意識して緊張や興奮を覚えることはなく、彼の頭の中にあったのは、これだけだった。
「フツー通りにやれたら、いいな」
最終日の午後はもはや雨がほとんど降らず、ときおり晴れ間も出た。バルタスロールの天候がどんどん回復していった様子と重なるように、松山のゴルフも安定感と彼らしさを取り戻していった。
大量の降雨のせいで地面はぬかるんでいたが、柔らかくなったグリーンは彼のボールを優しく受け止めてくれた。
「ピンデッドに狙えるし」
悪天候がもたらした悪条件も味方に変え、ポジティブな姿勢で前へ前へ。そこにも、いつもの松山が戻りつつあった。