松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹の、記念すべき全米プロ。
4位より、やっと戻った笑顔を喜ぶ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/08/02 11:40
松山英樹は、不調だと表情が動かなくなり、口数が減る。この笑顔が、彼の復調を雄弁に物語っているのだ。
キャディとの会話、笑顔が増えるのは好調の証。
思い切りよくドライバーを振り切り、ボールの行方を目で追いかける。我がボールがフェアウエイに落ち着いた様を見届けると、目を丸くしたり口を尖らせたり、表情豊かなリアクション。
握っていたドライバーを進藤大典キャディに手渡しながら、しきりに言葉を交わし、明るい笑顔を見せる。2人のコミュニケーションが増えること。それは、彼らのパフォーマンスが上がっていることと同義だ。
悠々とフェアウエイを捉え続けるドライビングに納得しながら、セカンド地点へと歩き出すタイミング、スピード、歩き方。
どっしりと安定していながら、獰猛さも潜む。そんな松山らしい躍動感と力感が戻りつつあった。
12番の2メートルのパットが、大きな分かれ目だった。
ほぼ毎ホール、フェアウエイを捉え、グリーンを捉え、ミスらしいミスはほとんどなく、前半はすべてパー。淡々と黙々とプレーしながら、じっと好機を待つスタイルも松山らしさの1つだ。
そして、好機は訪れた。
11番で7メートルのバーディーパットを沈め、右こぶしを握ってガッツポーズを取った直後。パー3の12番ではティショットをピン2メートルにピタリと付けたあのとき、小さな山が生まれつつあった。
だが、その2メートルを沈めることはできなかった。14番、15番、さらにチャンスを作ったけれど、カップを舐めたり蹴られたりでモノにできず、その傾向は17番のパー5まで続いていった。第3打をピン下1メートルに付けながら、バーディーパットはカップに蹴られ、パーどまり。
18番はようやくバーディーを奪って締め括ることができたが、11番と12番で生まれかかった小さな山は、それ以上大きく高くなることはついになく、だから結果は優勝争いに絡むことなく4位に終わった。