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26年目のG1クライマックス。
棚橋弘至、ぶっ壊れた「エース」。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2016/07/27 17:30
棚橋のモットーである「疲れない、落ち込まない、あきらめない」で、この最大の危機を乗り越えられるか?
開幕3連敗で、強気の「大丈夫」も消えた。
今年も札幌に行った。だが、今年は違った。7月18日、同じ札幌「北海きたえーる」の開幕戦で、棚橋はSANADAの胴絞めスリーパー(SKULL END)に耐え切れずにギブアップ負け。
7月23日、町田での2戦目も真壁刀義にニードロップを食らってフォール負け。
7月25日、福島ではタマ・トンガにもフォール負けした。
なんと3連敗だ。さすがにもう後はない。
「大丈夫」
「オレが大丈夫といえば大丈夫」
「キラキラの夏にして見せる」
そう棚橋は楽天的に強気の発言を繰り返してきたが、3連敗後、ついに「大丈夫じゃない」に変わった。
3月の大田区総合体育館でバッドラック・ファレに完全KOされてから、棚橋のリズムは狂いっぱなしだ。エースの目に精彩がない。
棚橋は肉体以上に、精神的にも壊れてしまったのか?
エース棚橋弘至の目が、最近は持続しない。
私はカメラのファインダーを通して、リングサイドからレスラーの動きを追っているが、よく目を見ている。
確かにワザを繰り出す瞬間瞬間はエース棚橋弘至の目になるが、それが持続しない。なにかウツロで焦点が定まらずに、ぼんやりどこかを見ている時間が長い。
ポーズを決めても、形だけでつかみどころがなく覇気が感じられない。ターゲットに集中できない何かが、棚橋の中で起きている。肉体が病んだことで心のバランスが崩れてしまったのかもしれない。
アスリートがケガで欠場した場合、通常では以前の状態に戻るまでその2倍の期間を要するといわれる。年を重ねればその期間はさらに延びる。
棚橋も39歳だ。今年の誕生日が来れば40歳。若いと思っていた棚橋も、「不惑」なのだ。
「不惑」の意味とは逆に、迷いが棚橋の心の中に侵入してしまったのか?