オリンピックへの道BACK NUMBER
水泳・入江陵介のスタイルは不変。
「普通」のままで世界と戦い続ける。
posted2016/07/26 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JMPA
これまでに何度か耳にした言葉を思い出す。
「普通」
入江陵介が発したその言葉に、入江の一面であるにせよ真実があり、トップスイマーたる価値があるように思える。
今、入江は、3度目の大舞台を目前にしている。
そのキャリアは長い。
ある程度規模の大きな国際大会で見れば、最初のタイトルとなったのは、今から10年前、2006年のアジア大会背泳ぎ200mでの金メダルである。
以来、様々な大会で成績を残してきた。
オリンピックは、2008年の北京、2012年のロンドンと2度出場。北京では200mに出場し5位入賞、ロンドンでは200m(1分53秒78)とメドレーリレーで銀メダルを、100m(52秒97)は銅メダルを獲得した。世界選手権でも、2009年、2011年に200mで銀メダル、2011年に100m、2013年にメドレーリレーで銅メダルを手にした。今春の日本選手権では100、200mともに優勝したが、200mは実に10連覇を数える。国内外で第一線に立ち続けてきたことが分かる。
日本選手権で抱いた「負けるかな」という不安。
ただし、今シーズンは、苦しい時間を過ごしてきた。
優勝したとはいうものの、日本選手権では本来の泳ぎができなかった。100mは53秒26にとどまり、200mでは予選、準決勝ともにトップを他の選手に譲った。
「負けるかな、と思うのは200mでは今までありませんでした」
決勝のレース後、そう口にしたところに、抱いていた不安が表れていた。タイムは1分56秒30。2014年の1分53秒91、2015年の1分54秒93と比べれば、大きく遅れた。体調不良が原因だった。
5月のジャパンオープンでは、100mが53秒43、200mは1分55秒89でともに優勝。この大会に照準を合わせていたわけではない中での結果であることを考えれば、ある程度泳ぎを戻してきたレースであると言えた。本人も、「いい泳ぎができました」と手ごたえを得た。