オリンピックへの道BACK NUMBER
水泳・入江陵介のスタイルは不変。
「普通」のままで世界と戦い続ける。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJMPA
posted2016/07/26 11:30
4月の日本選手権で入江は200メートル背泳ぎを制した瞬間、表情を崩すことはなかった。
入江は何度も壁に突き当たり、挫折を経験してきた。
だが、7月の三重県選手権では、100m53秒43、200mは1分56秒27。もちろん、リオへの過程の中での大会だが、目標としていたタイムには届かなかった。
「日本選手権のあと、泳ぎ自体のよくなかったところを調整しています」
それも途上にある。オリンピックまでの時間は、刻々と少なくなっていく。安閑とはしていられない。
でも思えば、入江は何度も、壁に突き当たり、挫折を経験してきた。
2007年の世界選手権代表を逃したとき。2008年の北京五輪でメダルを期待されながら、5位にとどまったとき。ロンドン五輪の翌年は低調なまま推移し、やめたいと思ったこともあった。その後はヘルニアに苦しめられた。
その都度乗り越えて、第一線に立ち続けた。涙を何度も見せてきたし、苦しい思いを吐露したことだって珍しくはなかった。率直に弱い部分も表に出してきた。
ある意味、そこには「普通の青年」がいつもいた。
高校時代の取材時、こう口にしたことがある。
「いや、普通の高校生だと思います」
最近もまた、ふだんの生活ぶりを尋ねて、こう語ったのを思い出す。
「普通だと思います」
聞いていけば、たしかに、同年代と何ら変わるところはないように受け止められた。
そして語られた生活の様子は、これまでに見せてきた涙や心情、葛藤、苦しみ、それらと通じるものでもあった。
ある意味、そこには「普通の青年」がいつもいた。