セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インザーギ、ガットゥーゾ、オッド。
2006W杯優勝メンバー、指導者の今。
posted2016/07/17 11:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
フィリッポ・インザーギが、再び現場に帰ってくる。
イタリア3部のベネツィアで、指導者としての再起を期すのだ。
「家でじっとしているのは気分が悪い! 監督として再出発だ。まるでミランに入団した日のような緊張と興奮だよ。勝者のメンタリティをチームに植え付けたいんだ」
就任会見では、まるで入団した新選手のように背番号9が入ったベネツィアのユニフォームを贈られ、満面の笑みを浮かべた。今すぐにでも現役復帰できそうなほど、インザーギの身体は精悍に絞られている。
4年前に引退して監督へ転身したインザーギは、'14年の夏、指導者転向後わずか3年目にして、古巣ミランのトップチーム監督へ就任。10位に終わったシーズンの終了後、成績不振の責任を問われてあえなく解任された。トントン拍子で出世したはずが、挫折と失望しか残らなかった。
意気込むインザーギは、キャンプ開始日を繰り上げ。
浪人監督となり、故郷ピアチェンツァで家族と過ごしたり、釣りをしたりして過ごしたが、あのインザーギがそう長くじっとしていられるはずもない。
かつてMF名波浩がプレーした水の都のクラブは、今世紀に入ってから破産や経営陣交代を経て、今夏3部昇格を果たしたばかり。だが、新スタジアム構想までぶち上げるタコピーナ会長の鼻息は荒い。
「我々の計画はセリエA昇格まで見越したものだ。ピッポ(・インザーギ)は勝利に飢えている。ベネツィアは彼の指揮で勝利するのだ」
新監督インザーギは、1年ぶりの現場復帰に逸る気持ちを抑えきれない。フロントに懇願して、プレシーズンキャンプの始動日を1週間早めてもらった。
「今季はどのチームもうちを倒そうと躍起になるはずだ。昇格を勝ち取るのは難しいが、やるしかない」
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、インザーギの再出発をかつてベネツィアから出航した冒険家マルコ・ポーロになぞらえた。
悠久の世界的観光地であるベネツィアは、2016年現在の欧州サッカー界にあっては微々たる存在に過ぎない。
それでも、“スーペル・ピッポ”は、辺境ともいえる水の都から再びサッカー界の荒波へ漕ぎ出した。