岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
日本ラグビー、強化指針の過渡期。
スコットランド戦連敗をどう見るか。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/07/16 11:00
6月25日のスコットランド戦では逆転負けしたが、25歳のスクラムハーフ茂野海人がトライを決めるなど新世代の成長を感じさせた。
世代交代と強化の新メカニズムが軌道に乗りつつある。
2つ目の収穫は、世代交代が着実に進んできている点です。
現にスコットランド戦では、RWCイングランド大会から半数近くのメンバーが入れ替わりましたし、RWCイングランド大会に出場しなかった選手も数多く出場しました。
このような布陣でティア1(世界のラグビー界でトップ10に入るチーム)の一角であるスコットランドと互角に戦えた、しかも第2戦は終了10分前までリードする展開に持ち込めたというのは、かつての日本代表では考えられなかったことです。ましてや第2戦などでは、日本が最も得意とする形でトライを奪うシーンさえ生まれています。
これは私が感じている3つ目の手応え、日本代表の新たな強化のメカニズムが、少しずつ軌道に乗りつつあることにも関連してきます。
従来の日本ラグビーは、テストマッチや国際大会にターゲットを絞り、代表を強化する方式をとってきました。6月のテストマッチなどは、数ヶ月も前から準備するのが普通でしたし、RWCイングランド大会に向けても、かつてないほど長期的な合宿を行い、徹底的にチームを鍛え上げました。
タスクフォース型での強化で感じた限界とは?
これが奏効して、RWCイングランド大会では3勝を挙げることができたわけですが、タスクフォース型の強化には、いくつかの問題がありました。
まずタスクフォース型の強化では、強化できる選手の数が限られてしまいます。またコーチングスタッフの人選などに関しても、実際に指導者が着任して活動をし始めないと、うまく成果が出るか出ないかわからないというリスクも抱えていました。つまりは代表チームの強化はできても、日本ラグビー界全体の底上げが図れるようなシステムが整備されたわけではなかったのです。
タスクフォース型の代表強化を行うことは、RWCイングランド大会後の状況を考えても、根本的な限界がありました。
日本代表を強化するにはトップリーグなどのレベルを底上げしつつ、人気を盛り上げていかなければなりませんし、個々の選手が海外での経験を積むことも重要です。それを考えた場合、RWCイングランド大会の前のように、年間150日以上、選手を招集して強化合宿を行うのは不可能でした。
ではいかにこの矛盾を解決するのか。