沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
宝塚記念でマリアライトが完全開花。
大事に、我慢で育てられた新女王。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2016/06/27 11:20
キタサンブラックをかわし、ドゥラメンテの追撃がギリギリ届く直前がゴール。マリアライトもだが、蛯名正義の騎乗も光った。
馬場が悪いことも、マリアライトに有利に働いた。
16番枠から出たマリアライトは、揉まれることのない外目を走り、スムーズな競馬をすることができた。
「馬場が悪くなることは、この馬にはマイナスにならないと思っていました。1コーナーに入るときはノープレッシャーで、エリザベス女王杯を勝ったときと似たような位置取りになりましたね」と久保田調教師。前走の目黒記念で2着になったあと調子が上がり、状態には自信を持って臨んだという。
序盤は、後方6、7番手の位置取り。蛯名はこう振り返る。
「前半は進んで行かない感じでしたが、3、4コーナーからはスムーズに上がって行くことができました。最初の入りはたぶん速いと思ったのですが、内回りだし、馬場状態からして、そう簡単に後ろから追い上げることはできないので、少しずつ差を詰めて行くようにしました。こういう馬場は得意ですね」
勝負どころで大外からマクるように進出し、ゴール前、牡の強豪との叩き合いを制したのだから掛け値なしに強い。
パワーとスピードと底力を兼ね備える血統。
母の兄に'06年のジャパンカップダートを勝ったアロンダイト、半兄に'13年のジャパンダートダービーなどを勝ったクリソライト、半弟に、昨年ダートの準オープンを勝ったあと神戸新聞杯を制し、菊花賞で1番人気に支持されたリアファルがいる。パワーとスピードと底力を持った母系の出身だ。
「牧場と連携をとりながら大事に育ててきた」と久保田調教師が言えば、「スタッフが成長を待って我慢した結果」と蛯名。
この勝利によってアメリカのブリーダーズカップターフ(11月5日、サンタアニタパーク、芝2400m、GI)の優先出走権を得たわけだが、今後のプランは未定とのこと。次走がどのレースになるにせよ、素質が完全に開花した女王の先々が楽しみだ。