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宮里美香がやめた「順位への固執」。
リオ五輪代表決定まで、あと3週間。
text by
小林由加Yuka Kobayashi
photograph byShizuka Minami
posted2016/06/22 11:00
宮里美香の世界ランク最高位は8位。それは奇しくも4年前、ロンドン五輪の年のことだった。
他人に左右される順位ではなく、自分と勝負する。
「ゴルフは8割がメンタル。完全に」
宮里はそう言い切る。悪循環で優勝争いから遠のき、3月24日からのKIAクラシックでは予選落ち。今季メジャー第1戦のANAインスピレーションでも56位タイにとどまった。2月22日からキープしていた世界ランキング日本人トップの座も4月4日に野村敏京に明け渡し、4月25日には2位すら大山志保に奪われた。
葛藤が続く中、日本ツアーのサロンパスカップ出場の為、日本に一時帰国。それが、宮里にとって自分を見つめなおす時間になった。
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転機が訪れたのは、アメリカに戻って初戦となるキングスミル初日の前夜。抱えた葛藤をメンタル・トレーナーのクリスチャン・スミスに相談したところ、 “一打一打のショットで自分に勝つ”意識を持つように言われた。
「ドライバー、セカンド、ショット、パットひとつひとつ。イメージしていたように打てたら自分に勝ったとして評価していいんじゃないか? って。それで試してみたら、すごく自分の中ではまった」
他人の成績に左右される順位に照準を合わせるのではなく、ゴルフの醍醐味、自分との勝負に集中する。
「自分に勝つという感覚は、長い間求めていたものだった。ひとつひとつのショットに集中できるようになった。すごく楽しくなって、いいイメージで打てるようになった」
そのキングスミルでは初日、首位スタート。最終的には15位に後退したが、4日間モチベーションをキープし、首位を争った。次戦のショップライトでは3日目にスコアを伸ばし6位に食い込んだ。
パットを外して、ニコっと笑った宮里。
宮里のプレーを見ていても、ペース、そして表情が大きく変わったわけではない。だが、今季メジャー2戦目のKPMG女子PGA選手権3日目で印象的な場面があった。
13番パー3。6メートルのバーディーパットを打ち切れずショートした時、悔しい表情を見せるかと思いきや、宮里はニコっと笑った。まるでその一打の勝負を楽しんだかのように。そして次の14番パー4では、今度はさらっとバーディーを奪った。内に秘めるものを垣間みられた瞬間だった。
7月11日まで残すところ3週間。6月13日に発表されたランキングでは、野村、大山に続きわずか0.01差での3位。
「今は何も見ないようにしています。出場したい気持ちは強いですけど、それでまた噛み合わなくなるのは嫌。後からついてくるものだと今は思える」
そう吹っ切れた様子で言い切った宮里。葛藤をくぐり抜け、再び楽しさを感じているゴルフでの五輪出場へ、後は戦いきるだけだ。