松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が失った「満々の自信」。
全米OPの予選落ちとは何だったか。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/06/20 11:30
松山英樹にとってメジャーでの予選落ちは2014年のマスターズ以来。2戦連続の予選落ちは2年2カ月ぶりである。
「満々になった自信」がほとんどなくなった。
「練習場ではいい」
つまり、基本的な技術が足りないわけではない。だが「コースに対して打っていくための力がない」。つまり、せっかく身につけている技術をコース上で生かし切れていない。
「コースが難しいからそうなるというのもあるけど、コースで崩れるようなものだったら、ここでは絶対に勝てない。そこで崩れてしまってるという現実がすごく悔しいです。
今はショットの自信がない。練習では自信満々になってスタートできるけど、だんだんだんだん、1ラウンドが終わったころには、ほとんどないぐらいになっている。そういうラウンドが続いている」
今大会の前に出たメモリアル・トーナメントでも予選落ちを喫したばかりだった。あのときの予選2日間はフィル・ミケルソン、マット・クーチャーと同組で、ミケルソンは大人気を博し、クーチャーは優勝争いできる位置へ浮上し、2人とも大きな拍手と歓声を浴びながら満面の笑顔を返していた。
だが、松山だけは「いいショットが一発も打てなかった」というゴルフで予選落ちした。
今大会で2試合連続予選落ちとなり、またしても1人だけが蚊帳の外。それは松山にとっては傷に塩を塗り込まれるようなもの。強気に見えていても実は結構ナイーブな彼の心は、ずいぶん傷ついていたのだと思う。
「邪魔にならないようにしていた」、「満々になった自信がほとんどないぐらいになっている」。視線を落としながら、つらつらと思いを吐き出していった松山はまるで懺悔する子供のようだった。
これが世界の頂点に続く「難所」なのか。
世界の頂点へ続く道の途上には「試行錯誤」という名の難所があるらしいという話を開幕前のこのコーナーで書いた。その難所をクリアできるかどうか、その答えを松山がこの全米オープンで見せてくれるだろう、と。
オークモントに挑んだ松山は、難所で足止めされたどころか、せっかく歩いてきた道を後戻りさせられたのかもしれない。
けれど、難所を避けていたら、いつになっても前進はできない。体当たりしては跳ね返され、今度は別の形で体当たりしては大きく跳ね返され、そんなことを何度も繰り返していくうちに、いつか難所を通過できる。