ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日本ゴルフ界の衰えない年長者たち。
谷口徹が若手に「5歳、オレにくれ」!
posted2016/06/26 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
「最近のワカモノは……」なんてフレーズは、必ずしも人の心に響くものではない。
聞く側にしてみたら、境遇をともにしていない年長者から、ただ上から目線で吐かれる言葉はどうもピンとこない。時代によって社会通念は違うし、価値観も日々変化している。こういった類の小言は、最終的に酒の席で「オレが若い頃は……」とまで続くのがパターン。得てして、時代錯誤も甚だしいと陰口のネタになるのがオチだ。
ただそれが、同じフィールドで、世代を問わず明確に優劣を付けられる世界にいる場合は、ワカモノは耳が痛い。優れた年上の先輩に核心を突かれ、ぐうの音も出ない。
日本の男子プロゴルフ界はいま、ある意味でそんな状況にある。
オークモントCCで行われた今年の全米オープンに出場した日本人選手は、それぞれ経験が豊富なメンバーばかりだった。
48歳の谷口徹にはじまり、37歳の谷原秀人。宮里優作は最終日の19日に36回目の誕生日を迎え、池田勇太は30代になって初めて出場するメジャーになった。全員合わせて国内ツアー通算47勝。米ツアーを主戦場とする松山英樹以外の彼らはみな、5月に日本で行われた、1日で36ホールを回る最終予選会で出場権をもぎ取ってきた。
欧米では、若いプレーヤーが続々台頭するようになって久しい。今大会に出場した156人の平均年齢は31.1歳だった。国内ツアーにいる日本人ゴルファーの選手層が、海外に世代交代で遅れをとっている事実は否定できない。
結果から言えば、予選を通過したのは2人で、最高位は宮里の23位。優勝争いには加われないままだった。とはいえ、彼らはそれぞれの持つ気概を残して帰っていった。
谷口は出場選手中、上から4番目の年長者だった。
初日にオークモントの空を横断したいくつもの雷雲は、大会のスケジュールを狂わせた。松山と同様に、2日目に予選ラウンド36ホールを一気に回ることを強いられた谷口は、全選手のうち4番目の年長者だった。
ラウンドの間、同伴選手のキャディに年齢を聞かれて答えると「ここは40歳までしか回れないぞ」と笑われた。10回目の出場は、尾崎将司の13回に次ぐ日本人史上2番目に多い記録。
「じゃあ、前のティグラウンドから打っていいか?」
和やかな雰囲気を漂わせたラウンドだったが、谷口はまたも厳しい現実を突きつけられた。最高難度に仕上げられたコースでは、パワー不足の壁は今回も高かった。ティショットから続くタフな状況が、ボディーブローのようにショートゲームの卓越した技を蝕んでいく。昨年始めた肉体改造もむなしく、カットラインに遠く及ばなかった。