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安田記念、モーリスが犯した失敗。
ロゴタイプを楽にした「後続にフタ」。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2016/06/06 11:20
2013年の皐月賞以来となる勝利を飾ったロゴタイプ。クラシックを争ったキズナやエピファネイアは既に引退したが、2度目の全盛期は訪れるか。
モーリスが掛かり、後続を抑える絶好の形に。
この流れを先導したのはロゴタイプに違いないのだが、流れをここまで遅くしたのは、折り合いを欠いて2番手につけた、トミー・ベリーのモーリスだったと言える。
「前に馬を置くことができず、掛かってしまった」と振り返ったベリーに対し、田辺は冷静だった。
「モーリスがすぐ後ろにいるのはわかっていました。掛かっているときは、ほかの馬に並べたくないものなので、あそこで抑えてくれた。道中は、単走の追い切りのような感じで走ることができました」
モーリスがロゴタイプの斜め後ろにつけ、手綱を引っ張り切りの状態で我慢したため、後続はフタをされたような格好になり、動くに動けなくなった。
田辺の術中にベリーがハマり、全体の流れがロゴタイプにとっておあつらえ向きになったわけだ。
しかも、3着になったフィエロの内田博幸や、5着に来たイスラボニータの蛯名正義ら、追い込んできた馬の騎手たちが指摘したように、モーリスは、直線入口で外にふくれ気味になり、リアルスティールらとともに馬場の真ん中に進路をとった。追い込もうとした騎手たちにとっては、前の馬が外に張り出してきたので邪魔になり、内ラチ沿いで逃げ込みをはかったロゴタイプの田辺にとっては、近くでプレッシャーをかけられなくなったので楽になった。
乗り替わりが続いてきたことのマイナス面が出た。
終わったから言えることだが、モーリスが無理に抑えず、勝負どころから直線にかけて、ロゴタイプに馬体を併せて負かしに行けば、違った結果になっていたかもしれない。エンジンのかかりが比較的遅いので、もっと早く動いてもよかったはずだ。ベリーは、大本命に乗りながら、勝ちに行く競馬をしないままレースを終えてしまった。
昨年の1月以降、モーリスが連勝街道を突き進むようになってから、ひとりの騎手が連続して騎乗したのは、準オープンとダービー卿チャレンジトロフィーの戸崎圭太と、マイルチャンピオンシップと香港マイルのライアン・ムーアだけで、あとは乗り替わりがつづいている。馬とコースを熟知した騎手が乗りつづけられなかったことが、ここに来てマイナス面として出たように見受けられる。
また、パドックで入れ込み気味で少し発汗していたように、調整過程がいつもと違ったため、万全の状態ではなかったのかもしれない。それでも最後は追い上げ、2着を確保したのだから、やはり強い。