沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
安田記念、モーリスが犯した失敗。
ロゴタイプを楽にした「後続にフタ」。
posted2016/06/06 11:20
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
絶対王者モーリスの連覇が濃厚と見られていた第66回安田記念(6月5日、東京芝1600m、3歳以上GI)は、8番人気の伏兵ロゴタイプ(牡6歳、父ローエングリン、美浦・田中剛厩舎)の逃げ切りという波乱の決着となった。良馬場で、勝ちタイムは1分33秒0。単勝1.7倍という圧倒的1番人気に支持されたモーリスは、1馬身1/4差の2着だった。
12頭という少頭数。さらに、前日と当日朝の雨により、午後の早い時間までは稍重だった芝コンディションからして、ある程度流れが落ちつくことは予想できた。
とはいえ、ここまで遅くなることはほとんどの騎手が想定していなかったようだ。
田辺裕信のロゴタイプが引っ張った流れは、ゲートから3コーナー入口までの3ハロンが35秒0。そこから4コーナー出口までの2ハロンが12秒0-12秒1。3、4コーナーの勝負どころで、どの馬も動かず、12頭が馬順をほぼ保ったままゆっくり進んだ。1000m通過は59秒1。不良馬場で行われた2014年に並び、過去10年でもっとも遅かった。
直線で内ラチ沿いを進んだロゴタイプは、ラスト3ハロンを33秒9でまとめて、見事に逃げ切った。
単勝36.9倍、「逃げ宣言」は注目されなかった。
田辺と田中調教師は戦術のひとつとして、逃げることもあり得る、とレース前に確認していた。
「スタートが上手なので前で流れに乗りたい。ハナに行くことも考えている」
これは、当日のスポーツ報知に掲載された田辺のコメントだ。単勝36.9倍という人気薄だったせいか、この「逃げ宣言」はそれほど注目されなかった。
「着を拾うのではなく、勝つにはどうしたらいいかを考えていました」
そう話した田辺だが、スローに落とすことにこだわっていたわけではなかった。
「ハナに行こうと決めていたわけではなく、ぼくが(ハナを)主張したら、周りはどうするかな、と思っていました。馬の気分がよければ、バンバン行くことも考えていました。でもすぐにピタッと落ちついて、競ってくる馬もいなかったので、ああいう流れになりました」