ル・マン24時間PRESSBACK NUMBER
ル・マン初制覇をターゲットに、
最強マシンTS050 HYBRIDで挑むトヨタ。
text by
赤井邦彦Kunihiko Akai
photograph byTOYOTA
posted2016/06/09 10:50
WECの第2戦スパ・フランコルシャンにて。レースでは2位を大きく引き離してトップを独走し続けたが、トラブルのため惜しくも下位フィニッシュに。
ル・マン挑戦は32年目になる……。
トヨタのル・マン挑戦は1985年に始まり、今年で32年目を数える。これまでの最高位は1992年、94年、99年、2013年の2位。1999年と2014年にはポールポジションを獲得するも、優勝はまだない。しかし、2012年から新しく始まったFIA WEC(World Endurance Championship=世界耐久選手権)の1戦に組み込まれたル・マンでは、トヨタは常にトップ争いに加わり、優勝の狙える位置でレースを戦ってきた。
特に2014年は、24時間の半分以上でレースをリードし、ル・マン初制覇を誰もが信じた。それだけに、2日目の夜が明ける前にトップを走るトヨタがトラブルに見舞われた時のショックと落胆は大きかった。
しかし、この躓きがトヨタのやる気に再び火をつけたことは間違いない。
全レース活動を統一し、一新させたトヨタの本気度。
トヨタはすべてのモータースポーツ活動を、「TOYOTA GAZOO Racing」のチーム名のもとに統一した。これは、モータースポーツ活動がトヨタ全社、それ以上にトヨタグループ全体の活動であり、そこで得られた知見、技術的進化、人材育成が、トヨタのクルマづくり、つまり市販車に活かされるという証でもある。
ル・マンをはじめとするWECへの参戦も、その流れの中にある。2012年から新しく始まったWECでは、最上位クラスのLMP1に参戦するメーカー系チームはハイブリッド車での参加義務がある。レースで得られた知見を市販車に活かすことを目的とするトヨタにとって、ハイブリッド技術を鍛える場所としてWECは最適の場だった。
WECでは2014年に8戦中5勝をあげ、待望の世界選手権制覇を成し遂げた。しかし、その年も前述したようにル・マンだけは勝てなかった。
プロジェクトを進める関係者は、その成果を踏まえた上で改めて2015年のル・マンに向けて準備を進めたが、そこでも惨敗。
昨年はル・マンだけでなく、WECシリーズでも1勝もできず、惨憺たる結果だった。
そこで、2016年はル・マン制覇をターゲットの核において、万全を期しての改革が進められた。その結果、誕生したのがTS050 HYBRIDという最強のマシンだ。