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復活の宮市亮が2度見せた涙の理由。
「ちょっとうるっとしちゃいました」 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2016/05/20 10:40

復活の宮市亮が2度見せた涙の理由。「ちょっとうるっとしちゃいました」<Number Web> photograph by AFLO

チームメイトに祝福される宮市の目には、涙が浮かんでいた。彼の復活を、みんなが待っていたのだ。

「ちょっと、うるっとしちゃいました」

 つまり、欧州に来て評価に値する結果を残したのは、最初のフェイエノールトでの半年間だけ。その後は負傷に悩まされ、半年か一年おきにレンタルに出されてのは活躍できないという繰り返し。負傷だけでなく、4シーズン半で延べ6チームでプレーするという、普通に考えればかなり難しい状況に置かれたのちに、アーセナルとは契約は終了した。

 '15-'16シーズンはドイツ2部のザンクトパウリにフリーで加入し、心機一転立て直そうとした矢先のプレシーズンマッチで、今度は左膝前十字靭帯断裂。開幕を前に「今季絶望」と告げられた心境は想像するだけで辛い。

 それでも、リハビリを経てこの4月からは途中出場を4度繰り返し、迎えた最終戦だった。2日前の練習からこの日の先発は予測していたと言い「昨日は全然、眠れなかった」中で迎えた一戦だった。

 途中出場を繰り返してきていたといえども、ブランクは長く「フィットネスは整わなかった。やってても90分は無理だと思った」という状態でのプレー。得点に涙しても致し方あるまい。

「そんな風になると思ってなかったんですけど、なんかわかんないですけどちょっとこみあげて来るものがあって、ちょっと、うるっとしちゃいました」

得点者よりも熱烈に祝福された宮市。

 印象的だったのは宮市がアシストしたこの日の2点目だった。4分にカイザースラウテルンに先制を許し、1分後に宮市が同点弾を決めて迎えた22分の逆転ゴールだった。だが、チームメイトは得点者のティへの祝福はそこそこに、クロスを挙げてアシストをした宮市の元へと駆け寄った。1年間の苦労を見てきたチームメイトたちとの暖かな光景がそこにはあった。

「19歳でウィガンに行ってから、怪我に苦しめられてなかなか点が取れなくて。ローン先でも結果が出なくて、ここ(ザンクトパウリ)で結果を出そうという思いできたのに怪我をしてしまって、本当に苦しかったなと。でも、本当に自分を信じてやり続けたのが、今回結果としてでたのが良かったです」

【次ページ】 復活と言ったって、1992年生まれのまだ23歳。

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