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サンウルブズ、初勝利は最高の良薬。
発案者エディーの志を今こそ考える。
posted2016/04/26 15:15
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Atsushi Kondo
入場者数は1万4千人ちょっと。
気候は良くなっているのに、サンウルブズのこれまでのホームゲームと比べるとバックスタンドには空席が目立った。
仕方ない。前の週にはチーターズ相手に、92点も献上してしまったのだから……。
しかし、長征のジャガーズを迎えた試合は、後半になってスクラムを組むたびに、スタンドのファンが「オオオオオオ」というオオカミの遠吠えを真似するようになった(この遠吠えは定着したと見てよい)。
最終スコアは36対28。
マーク・ハメットHCは「思わず涙が出た」と語り、堀江翔太主将のこれまでの苦労も報われた。
2017年のサンウルブズは、どうなっているのか?
関係者に明るい表情が広がるなか、ようやく未来に向けての話題が出てくるようになった。1勝をあげたことで、みんなが前を向けるようになったのだ。勝利は何にも優る良薬だ。
週末、ホットな話題に昇格したのは、「2017サンウルブズ」のことだ。
とにかく船出を優先させたサンウルブズだけに、様々な課題が浮き彫りになっている。
4月、1週間ほど来日した前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏は(サンウルブズを作ろうとアイデアを出したのは彼でもある)、
「本来、私が考えていたのは8割を日本代表の選手で固め、それにプラスして20歳前後の選手を3、4人ミックスさせるというプランです。若手に経験を積ませ、未来に向けて準備していく。現状はそうなってはいませんよね」
と私に話していた。
たしかにいまのサンウルブズには、育成の余裕はないだろう。