猛牛のささやきBACK NUMBER
難病から復帰したオリ・安達了一。
いなくなってわかったその重要性。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/04/19 10:40
決して派手な選手ではないが、オリックスは安達了一の存在の重要性に改めて気づいたことだろう。
試合前の心配げな表情から、試合中は一転……。
「入院している時は長かったですけど、ここまできてみると、早かったですね。こんなに早く復帰すると思っていなかったので」
試合前、安達はそう言って微笑んだが、手放しで喜んでいる様子ではなかった。
「普通にやれるかちょっと心配です。(今年一度もやっていない)ナイターの試合というのも心配ですね。やってやろうという気持ちはありますけど、あまり無理せずやっていきたい。まだ先は長いので」
“心配”という言葉がもれる。
病から急ピッチで一軍復帰したばかりの安達に、3勝9敗とあえぐチームの起爆剤になれと期待するのは酷に見えた。
しかし、試合前の慎重な言葉とは裏腹に、打席に立てば初球から勢いよくバットを振った。
「自分は積極的に行くのが持ち味なので」
安達は、チームが放った3安打のうち2安打をたたき出す奮闘を見せ、守備も軽快にこなした。
安達の内野安打から、チームの攻撃は動き出す。
試合には敗れたが、無事にフル出場を終え、試合後は安堵の表情を浮かべた。それでも不安はつきまとう。
「これから家に帰ってご飯を食べて、明日(体調が)どうなるかですね。この時間に食べるのは(発病後)初めてなので」
食事も、生ものや香辛料のきいたものを避けるなど、気を配らなければならない。一歩ずつ、体と相談しながらの前進が続く。
しかし翌日も安達は体調に異変はなく、フル出場した。5回、安達のボテボテの内野安打から、28イニング連続無得点だった打線が動き出す。相手バッテリーの隙をついて安達が二塁を陥れると、小田裕也の四球を挟んで、糸井嘉男がチームの今季第1号本塁打を放ち3-1と逆転。その後追いつかれるが、延長10回裏、小田のサヨナラ打が出て連敗は5で止まった。