猛牛のささやきBACK NUMBER
難病から復帰したオリ・安達了一。
いなくなってわかったその重要性。
posted2016/04/19 10:40
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
NIKKAN SPORTS
4月12日、オリックスの安達了一がひと足遅い開幕を迎えた。
3回裏に今季初打席を迎えると、スタンドから拍手が沸き起こり、「待ってたぞー!」という声も飛んだ。
「だいぶ力になりました。泣きそうになりました」
試合後、安達は感謝の思いを口にした。
安達が腹痛などの体の異変を感じ始めたのは、昨秋のキャンプ前だった。そして今年1月に潰瘍性大腸炎と診断され、入院を余儀なくされた。潰瘍性大腸炎は、厚生労働省の特定疾患に指定されている難病だ。腹痛や下痢などの症状があり、症状を抑えるためには継続的な内科的治療が必要とされる。安倍晋三首相はかつてこの病が原因で首相を辞任した。
安達の入院は20日間に及んだ。その間、食事はおかゆだけ。体重は約10kg減り、68kgまで落ちた。
いなくなって改めてわかる存在の大きさ。
不動の遊撃手だった安達不在の宮崎キャンプでは、西武時代にショートを守っていた中島宏之に加え、ルーキーの大城滉二、鈴木昂平を一軍で競わせ、外野手だった吉田雄人もショートにコンバートした。
しかし、いなくなって改めてわかる存在の大きさ。一昨年は143試合、昨年もチーム最多の139試合に出場した内野の要の不在は響いた。開幕2戦目の3月26日の西武戦で内野手全員が失策を犯すなど、守備の不安が開幕のつまずきの一因となった。
その間、安達は着々と復帰に向け歩を進めていた。2月10日に退院し、同15日から練習を再開。その後、二軍の練習に合流した。すぐに実戦というわけにはいかないが、若い選手たちと一緒にボールを追う表情は明るかった。徐々に体重も増え77kgまで戻った。
4月2日のウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦で実戦復帰を果たすと、8、9日の広島戦にフル出場。待ってましたとばかりに福良淳一監督は安達を一軍に呼び、12日に一軍登録された。