F1ピットストップBACK NUMBER
欠場のアロンソが献身的なサポート。
F1デビュードライバー入賞の裏側。
posted2016/04/10 10:40
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
チームメートのバトンの16メートル前方の12番グリッドの前で、レースのスタートを待つレーシングドライバーがいた。しかし、そのドライバーが乗るべき、レースカーはそこにはない。
なぜなら、その男はリザーブドライバーに自分のマシンを譲り、目の前に停まったF1マシンには、自らのカーナンバーである「14」ではなく、「47」が貼られていたからである。
その男とは、アロンソだ。
オーストラリアGPのクラッシュにより、ドクターストップがかかり、バーレーンGPへの欠場を余儀なくされていた。しかし、アロンソは欠場が決まった木曜日以降も、バーレーンにとどまった。
それは、金曜日に到着するロン・デニスを待って、再度FIAに出場できるよう交渉を行うためではない。自分が乗るべきマシンを駆って、グランプリにデビューするストフェル・バンドールンをサポートするためである。
F1デビューのリザーブドライバー、バンドールン。
バンドールンはホンダがマクラーレンと初めて実走テストを行った2014年末のアブダビ・テストでステアリングを握ったドライバーであり、その後もテスト走行をたびたび担当してきたドライバーで、リザーブドライバーながら、F1マシンの操作には長けていた。さらに、昨年はF1直下のカテゴリーであるGP2シリーズで7勝を挙げ、チャンピオンを獲得。レース巧者のバンドールンなら、いますぐF1にデビューしても戦っていけるだけの実力は備わっていた。
しかも、今年、参戦するスーパーフォーミュラのテストを行っていた日本の岡山からバーレーンGPに帰ってくるまでにバンドールンには、マクラーレンのエンジニアからさまざまな資料がメールで届けられ、F1デビューにあたって、マクラーレンも可能な限りのサポートを行っていた。