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Jクラブスカウト注目ナンバーワン!
京都橘高FW岩崎悠人、17歳の苦悩。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/04/09 10:40
1998年生まれの岩崎は東京五輪世代。代表ストライカーの期待もかかる。
「金の卵」を指導する監督の思い。
「進路はもう本人の意見を尊重しています。本人が練習参加をしたり、いろんな話を聞いて、考える。僕から話をするのは、このチームはどういうサッカーをするのか、どういう哲学があるのか、選手に対してどう考えているのか。彼に見えないところがあったら、伝えるようにしています。なるべくフェアな立場で、僕はあまり介入しないようにしています」
こう語るのは、京都橘高校サッカー部監督の米澤一成だ。「金の卵」を指導する責任者として、米澤は関係者と岩崎が話をするときは、最初だけその場にいて、あとは本人に任せ、その場から離れる。話を聞いたときも、関係者と話す岩崎を置いて、一人でチームバスの前でコーヒーを飲んでいた。一見無責任にも見えるが、これは米澤の岩崎に対する最大限の配慮だった。
「これだけ多くのクラブの方達に興味を持ってもらっている存在なので、そのことを本人に意識をさせないといけないと思ったからです。スカウトの方には『本人に話してもらって構いませんよ』と言っています。人間関係を作ってもらうのも大事だし、本人が判断をする材料にしてほしいなと思います」
「人としても成長できるチャンス」
1つや2つのクラブから声がかかる存在ではない。極端に言えば、どのクラブも獲得できるなら獲得したい存在であるからこそ、米澤は選択権を本人に委ねた。
「ただ、『夏までには決断をしないとあかんよ』とだけは言っています。変に決断の時期を延ばすと、選ばれなかったクラブは他の選手に行くタイミングが遅くなってしまう。そうなると、断ったクラブのチーム編成に迷惑をかけてしまうし、他の選手のプロになるチャンスも奪ってしまいかねないですから。そこまで考えることで、人としても成長できるチャンスだと思う」
自分の決断の大きさをしっかりと本人に伝え、より責任感と自覚を促す。米澤は厳しくも愛のあるメッセージを岩崎に送っている。そして、そのメッセージを受け取った渦中の17歳は、今、苦しみの中でもがき、自分の心に問いかける日々を送っている。
「難しいですね。(U-18日本)代表にも選ばれて、注目されるのは良いのですが、肝心のチームに帰ってからが重要なんです。僕が注目されることで、チームも注目されるのは良いのですが、そうなってくるとやっぱり『勝たなきゃ』とか、『良いプレーをして、良いチームだと思われたい』と強く思ってしまうんです。でもそれが実際できているかと言うと、今はなかなか難しい状況なんです……」