サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
メキシコに勝ったU-23の完成度は?
コンセプトはOK、戦術の幅は道半ば。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2016/03/29 10:50
最終予選では不完全燃焼に終わった南野拓実だが、今回は決勝点の活躍。潜在能力は誰よりも高いだけに、その生かし方が問われる。
ハイプレスは90分間は絶対に続けられない。
2点目も遠藤が相手のボールを取り切ったところから中島がボールを受け、トップの久保裕也に縦パスを出した。
同時に3人目の動きで南野が動きだしており、久保-南野とボールが渡って追加点を決めている。久保は南野の動きを見ており、南野もパスが出ることを信じて走っていた。最終予選で築かれたコンビネーションがゴールにつながったのは非常に大きい。
基本コンセプトは、チームの軸としてしっかりと浸透している。しかも、そのコンセプトからゴールが生まれている。目指すべきスタイルへの前進が確かに感じられた。チーム戦術の徹底と完成度は、コンセプトの主唱者であるハリルホジッチ監督が羨むほどだろう。
いい意味での課題も見えた。
前からプレッシングにいくサッカーは、どうしても体力との勝負になる。90分間フルに動き、相手に厳しく強くコンタクトし続けるのは不可能だ。仮に1試合はできたとしても、五輪のように中2日での連戦になればどうしても運動量が落ち、球際が甘くなる。
これは、ロンドン五輪の教訓でもある。
最大のウィークポイントはサイドバックか。
今回のメキシコ戦も、後半は運動量が落ちて球際への厳しさが失われた。その分相手に余裕をもって展開され、押し込まれる状況がつづいてしまった。90分間の中でどうメリハリをつけるか、個々の体力面をどう補っていくかは修正が必要だ。
(2)の新戦力のフィット感については、後半に金森健志、関根貴大、鎌田大地ら最終予選に出場していない選手が出場した。メキシコに押された時間が長かったこともあり、個で流れを変えてくれることを期待したが、なかなか彼らが持つ本来の力を発揮する場面は見られなかった。
新戦力のラボは今後もつづくだろうが、テスト組は最終予選組を凌駕する活躍をしなければ、本大会の18名枠に生き残るのは厳しくなるだろう。
またメキシコ戦では、ウイークポイントとなるポジションが明確に見えた。最大の懸念は、サイドバックだ。
手倉森誠監督が評価する室屋成と松原健がケガで参戦できておらず、ファン・ウェルメスケルケン・際や小泉慶が右サイドバックで出場したが、守備の連携面などで不安が残った。
レギュラー選手の回復次第だが、復帰が難しいとなればサイドバックにOA枠が使用される可能性も高そうだ。
候補は酒井高徳、太田宏介あたりだろうか。