畠山健介のHatake's roomBACK NUMBER
家も車も練習着もない英国居候生活。
畠山健介を支えたのは仲間とWi-Fi。
posted2016/03/25 12:00
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph by
Kensuke Hatakeyama
たとえ国が違っても、ラガーマン同士のグラウンドでの意志疎通は意外にスムーズだ。しかし問題は、グラウンドの外側に待っていた。
たくさんの仲間やスタッフがサポートしてくれる為、グラウンドでのストレスはさほど無い。問題はグラウンド外での生活だった。
渡英前の話では、「ニューカッスルでは家が用意されている。車は自己負担になるが用意する」と聞いていた。いざニューカッスルに来てみると、旧友のトッド・クレバーの家に2、3日居候してくれとマネージャーから言われた。「その方が何も分からない君には好都合だろう」と。トッドに色々サポートしてもらい、教えてもらうといい、と……。
ところが、ニューカッスルに着いて3日後の2月1日(月)、トッドはアメリカ代表の遠征に向かった。色々教えてもらう前に、トッドはここを離れてしまった。イングランドで物は揃えることにして衣類などは最小限に留めたが、当面の生活のためにと日本で大量に日用品を買い、成田空港で信じられないほどの重量オーバー料金をとられ、無事に荷物が届いたことに安堵し、必死の思いで持ってきたのに、トッドの家にいるためにろくに荷物の整理も出来ない日々が続いた。
車も練習着もない。渡英する前とは全く話が違う。
車に関しても全く用意してくれず、家や車の件をチームマネージャーに話すと、「イギリスでは(居住)最低6カ月からじゃないと、家も車も契約出来ないんだよ」と言われた。
渡英する前の話とは違い、困惑した。
また練習着すら全く準備されていなかった。幸い自分でインナーとスパイクなどは持ってきていたので、私服の下にインナーを着てグラウンドへ行き、唯一貰えたのはヤッケと、皆とは違う短パン。それらを1つずつ。練習着くらいはチーム合流当日か翌日には貰えると思っていただけに、歯がゆかった。
それでも、「こっち(イングランド)では、これが当たり前なのかな」と思うようにしていたが、時を同じくしてプレミアシップのバースに加入したナキ(アマナキ・レレイ・マフィ)のインスタグラムを見ると、チームの練習着を着て写っている写真をアップしていた。ナキに連絡すると、家は3LDKだそうだ。とても落ち込み、夜独り、異国の地で寂しさと孤独に襲われた。