猛牛のささやきBACK NUMBER
豪快なスイングと、細やかな分析力。
オリ・吉田正尚の魅力的な「二面性」。
posted2016/03/25 10:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
NIKKAN SPORTS
「遅いんじゃー!」
こんな手厳しいヤジも、即戦力としてのファンの期待の裏返しだ。
開幕が6日後に迫った3月19日、オリックスのドラフト1位・吉田正尚が、遅めのオープン戦デビューを果たした。
大学日本代表で4番をはった期待のルーキーは、第4打席、阪神ラファエル・ドリスの152キロのストレートを代名詞のフルスイングでライト前に運び、一軍での一歩を踏み出した。
「いいもん見せてもらいましたね」
試合後、福良淳一監督は顔をほころばせた。
「ストレートの球種に自分の強いスイングができるのは魅力。普通なかなかあそこまで振れないですからね」
吉田自身も、手応えをにじませた。
「速いまっすぐを、自分の形でしっかりスイングできました。当てるようなバッティングは自分らしくないので、三振でもいいと思って振りました。とにかく、振れるということをアピールしたかった」
大学日本代表の仲間たちの活躍は、気になっていた。
初戦にして高い対応力も示した。3打席目は高めのボール球を振って三振したが、「その反省を踏まえて、次は目線をしっかり落として見極めた分、ヒットにつながったのかもしれません」とすぐに次打席で修正した。
「高山も出ていますし、茂木もここ(京セラドーム)で打ちましたし、いろいろ情報が入っていたので、自分も早く打席に立って、打ちたいという気持ちはやっぱりありました」
大学日本代表でクリーンアップを組んだ高山俊(阪神)、茂木栄五郎(楽天)の活躍は、やはり相当気になっていたようだ。
吉田は、敦賀気比高で1年から4番を任され、甲子園に2度出場。青山学院大では通算17本塁打を放ち、即戦力の長距離砲として期待された。
しかし1月、左ふくらはぎを痛めてキャンプは二軍スタート。2月6日に一軍昇格を果たすが、今度は右脇腹を痛め、わずか2日で降格となってしまった。