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3年連続の残留争いを戦う清武弘嗣。
取材エリアで爆発した感情と言葉。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2016/02/23 10:30
ハノーファーの攻撃を一手に引き受ける清武弘嗣。ニュルンベルクで味わった降格の悲劇を再現しないために。
「正直、今日勝てないとヤバいなって」
ロングボールを前線へ蹴り込み、アルメイダが競り勝ったとしても、落としたボールを味方が拾わなければ、一瞬で大きなピンチとなる。実際、ポストプレーが光ったシーンはわずかで、相手にボールを奪われることのほうが多かった。
それでも、アルメイダと清武が入ったことで、ハノーファーの空気は変わった。“預けられる”場所ができたことで、選手たちの心に安心感が生まれたのだろう。「ボールを前へ運ぼう」というアグレッシブさがわずかに見られたのだ。
酒井も「途中から選手が入り、チームの流れが変わった」と話している。しかし同時に「だけどその後半でも、普通と比べたらちょっと良くないくらいだということを、みんな気がつかなくちゃいけない」と重ねた。それだけ前半がひどかったということだ。
昨シーズン終了直後の代表合宿で右足を骨折し、シーズン開幕にも間に合わなかった清武。9月に彼の復帰とともにチームの機動力が増し、復調の兆しも見えていた。しかし、11月16日、日本代表遠征中に再び右足を骨折し、数カ月の離脱が決まる。
12月4日以降7連敗と成績が低迷しているチームのそばでリハビリすることしかできなかった清武は、この日のアウクスブルク戦を前にした心境について「正直、今日勝てないとヤバいなっていう雰囲気が自分の中にあった」と話し、そして続けた。
「そういう試合で、こういう戦い方しかできなかった。チームとして、このままでいいのか? もしも(2部へ)落ちるとしても、ミスを恐れず全力で戦わないと、後悔しか残らないから。そんな後悔をしたまま落ちていいのかって、俺は思っている」
萎縮したチームメイトへの苛立ち。
悔しさとは違う、もっと熱い感情が彼を饒舌にする。
「前半の戦い方を見ていると、チームとして何がやりたいの? と思う。今週は(試合間が)長い週だったから、ミーティングもしっかりとやったし、監督のやりたいこともはっきり示したとは思う。でも、みんなが自信を持ってプレーできていない。おどおどプレーしているというか。雨が降っていたし、イージーなミスも多かった。
みんな、危機感を持って練習はやっていると思う、でも、試合のピッチで(今日の)前半みたいな戦い方をしてしまう。怖がってパスを受けようとしない感じもあったし、受けてもすぐに『お前どうにかしてくれ』というパスしか出していなかった。そんなにおどおどプレーしていたら勝てない。
今日の試合で、選手それぞれが自分で気がつかないと意味がない。監督から言われたり、俺が言ったり、誰かに言われて気づくようでは、危機感が足りなさすぎる。
みんながどう感じているかはわからないけど。『これでいいのか』って自分自身を見つめ直さないとダメだと思う。戦術以前の問題。選手ひとりひとりがどこまで出来るか? と力を出し切って戦わないと残留は難しい。このまま落ちちゃったら、俺は全員が後悔すると思う」