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3年連続の残留争いを戦う清武弘嗣。
取材エリアで爆発した感情と言葉。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2016/02/23 10:30
ハノーファーの攻撃を一手に引き受ける清武弘嗣。ニュルンベルクで味わった降格の悲劇を再現しないために。
「俺はいつもしょうがないってことしか言ってないわぁ」
清武が「当然」と思い描くそんなイメージを、チームメイト全員に共有させることは容易ではないだろう。プロとしての意識や価値観など多種多様な人間が存在するのだから。
それでも、清武が「目指すべき姿勢」を指し示すことはできる。ドイツ語が流暢に話せずとも、逆に話せないからこそ、振る舞いやプレーで意識を変えられるかもしれない。
「キヨが旗を掲げるというか、仲間の気持ちをひっぱっていくことができるんじゃないかな」と言葉をかけた。
「うん。そうやるしかない。しょうがないですね、しょうがないですね。俺はいつもしょうがないってことしか言ってないわぁ~!」
イヤな空気を打ち破るように大きな声を出し、清武はロッカーへと向かった。
「しょうがない」は逃げるための言葉じゃない。悔しさや情けなさ、怒りなどネガティブな感情を洗い流し、不甲斐ない今日を終え、次の戦いへ備えなくてはならない。だから、現状をのみこみ、消化し、切り替えていくために必要なキーワードだ。
過去、何度も「しょうがない」と口にし、乗り越えてきた壁があったはずだ。
ゲームリーダーである清武がそのプレーでチームリーダーとなれることに期待したい。「これでいいのか?」と仲間に訴えられることを信じたい。
それが10番を背負った清武が越えるべきひとつの試練のような気がする。