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F1を去る「暴れん坊」マルドナド。
過激なクラッシュすら魅力的だった。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2016/02/15 10:30
2012年のスペインGPで唯一の勝利を挙げたマルドナドは、表彰台でアロンソとライコネンに担ぎ上げられた。
アロンソを逆転した、忘れられない走り。
F1というのはコース上だけの戦いではなく、コース外の戦いも含めて「F1」である。そのため、世界的な経済状況がF1に与える影響は決して小さくない。今回のマルドナドのシート喪失もその一端であり、マルドナドにF1ドライバーとしての資格が欠けていたからだとは思っていない。
不必要な事故が多かったことは事実である。しかし、2012年のスペインGPでフェラーリのフェルナンド・アロンソを逆転して優勝したあの走りは、いまも忘れることができない。そして、そういう記録よりも記憶に残るドライバーが、またひとり去っていったことが、いまは寂しい。
ありがとう、さようなら。
シート喪失が発表される直前、マルドナドは自身のツイッターでこうつぶやいていた。
「僕の将来について、心配してくれた多くのファンに感謝したい。でも、僕は2016年シーズンのスターティンググリッドにいない。神様、家族、スポンサー、友人、ファン、そして僕とベネズエラの夢を実現するためにサポートしてくれたすべての人にありがとうと言いたい」
その数日後、マルドナドとの契約を破棄したルノーもツイッターを通してマルドナドにこんなメッセージを贈った。
「あなたのコース上のパフォーマンスは、常に多くの人々の間で議論の対象になりましたが、私たちはあなたと一緒に働くのは楽しかった。あなたはマシンの力を最大限に引き出すために根気強く努力していただけでなく、明るく、フレンドリーで、とてもユーモアがあり、チームのメンバーを勇気付けてくれた。パストール、楽しい2年間をありがとう。君がいなくなるのは、寂しいよ!」