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F1を去る「暴れん坊」マルドナド。
過激なクラッシュすら魅力的だった。
posted2016/02/15 10:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
またひとり、個性的なドライバーがF1から去った。パストール・マルドナドである。
昨年の9月に所属していたロータスに2016年も残留すると発表していたが、その後ロータスはルノーに買収され、状況は一変。2月3日にフランス・パリで催された体制発表会にマルドナドの姿はなかった。
ベネズエラ出身のマルドナドが2015年に記録したドライバーズ選手権順位は、昨年F1に参戦したレースドライバー21人中14位という結果だった。チームメートだったロマン・グロージャンが51点を獲得していたのに対して、マルドナドは27点。数字だけを見れば、輝かしい成績ではない。しかし、サーキットでマルドナドがファンにサインをねだられているといった光景は珍しくなく、チームごとの記者会見でも多くのメディアがよく彼を囲んでいたものである。
「クラッシュトール」というニックネームも。
なぜ、マルドナドはこれほどまでに注目を集めていたのか。理由は2つある。
ひとつは、コース上での過激なパフォーマンスである。現在、F1では不当な事故を起こしたドライバーにペナルティを与え、1年間で12ポイントになると出場停止となる制度を導入している。昨シーズン、マルドナドに科せられたペナルティポイントは6点。全体で2番目に多いポイントだった。
ペナルティポイントを受けるようなクラッシュ以外でも、マルドナドは多くの事故やミスを犯している。その中でも、もっとも強烈だったのは、F1ドライバーとして母国ベネズエラに凱旋して、F1マシンに乗って街中でデモ走行するイベントでもクラッシュしたことだった。走り始めてすぐに起きた事故だったため、イベントはわずか数十秒で中止。この有り様には、イギリスから同行していた同じチームのメカニックもあきれていたという。
クラッシュのあまりの多さに付けられたあだ名が「クラッシュトール」。これはマルドナドのファーストネームのパストールをもじったもので、もちろん褒め言葉ではなく、揶揄するためにつけられた隠語である。