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欧州のピッチ上は「暴言」だらけ?
あまりにひどいサッカー単語帳。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/02/10 10:30
ナポリのサッリ監督は、よく言えば兄貴肌、悪く言えば柄の悪いパーソナリティ。発言にはくれぐれもご注意を。
グラウンドは、キレイごととは無縁の世界。
とはいえ、グラウンドへ一歩足を踏み入れれば、そこがキレイごととは無縁の世界であることは、両監督ともに百も承知のはずだ。
プロアマ問わず、イタリアのピッチ上で最も使用頻度の高い言葉は「cazzo(カッツォ=陰茎)」と「merda(メルダ=糞)」だろう。
2つの言葉は、マスメディア上で規制される代表的な2大俗語表現だ。TVの音声では“ピー音”がかぶさり、新聞では「c****」と伏せ字にされる。つまり、最初の一音だけで何を言わんとしているか誰もが即座に理解できるレベルで日常生活に浸透している、ともいえる。
筆者もイタリアに留学して、草サッカーの仲間に加わったらすぐに覚えた。何しろレベルの高低を問わず、グラウンドには“陰茎と糞”が飛び交っている。
シュートを外せば「チ●ポ!」。渾身のタックルを仕掛けるもあっさりかわされ悔しがるMFも「チ●ポ!」。
DFがマーク相手に抜かれれば「糞っ!」と罵りつつ追いかける、といった具合で、その言葉はまるで接続詞か感嘆詞のように使われる。カルチョの活きた言葉としての応用力は非常に高い。
ローマ監督「次はバレないようにうまくやれ」
また「私のようにトスカーナ州出身者は口が悪いんだよ」と嘯くサッリは、田舎クラブで気心知れたローカルメディアと過ごした時代が長かったせいか、全国区となった今でも公式会見の質疑応答中にやたら「cazzo」を混ぜてくるので、ナポリの広報は気の休まるときがない。
新たにセリエAへやってきた選手にイタリア語のレッスンを課すクラブは多く、その中にはメディア対応についての講習も含まれているはずだが、効果は甚だ怪しいものだ。
サッリの舌禍からわずか5日後には、セリエA21節の大一番ユベントス対ローマ戦で、ローマのベテランMFデロッシがユーベFWマンジュキッチに「黙りやがれ、糞ったれのジンガロ!」と暴言を吐いた。
ジンガロとは、路上での物乞いの他スリなどを働く流浪難民のことで、彼らが一般市民からいい感情を持たれているとは言い難い。
蔑称を投げつけられたマンジュキッチは激昂したが、ローマの監督スパレッティはデロッシをたしなめるどころか、「次からはバレないようにうまくやれ」と唆す始末。