“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-23代表で異彩を放つサイドバック。
ついに南野拓実を捉えた室屋成の青春。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/01/22 07:00
前列左から2人目の「12番」が室屋。ついに、南野と同じ代表チームにまで駆け上がってきた。
FC東京での厳しい経験を糧として……。
10月に明治大の一員として、関東大学リーグ戦に久しぶりの出場(※FC東京帯同中は大学の公式戦に出場せず)を果たすと、質の高いプレーを披露し続け、格の違いを見せた。
「迷った時期もあったけど、FC東京に帯同して、大きな経験を積めた事は間違いないです。FC東京では完全に『平等な競争の中から勝ち取れ』という環境があった。正直、最初は『ベンチには入れるかな』と思っていたところもあった。ちょっと甘かったですね。でも練習からも吸収出来ることはあるし、そういう厳しい目で見てもらえたからこそ、経験出来た事もあった。僕自身、決して通用しないと思っていないし、試合に出て、やっぱり試合に出る事の重要性や、出るための準備など、意識していたようでしていなかった部分をもう一度整理する事が出来たので」
明治大で試合を重ねる事で、同時にFC東京の練習の成果を実感する日々。FC東京では自分が“お客様”としてではない、プロの厳しさとはどういうものかを肌で感じることができた。
「結局、後ろ向きに考えても何も良い事は無いですから。だって、もともと僕がこういう立ち位置にいれるなんて、高校に入るまでは想像すら出来なかった事ですし、初心に帰れたというか、前向きに前進する事だって気がついたんです」
U-23の一員として、世界を舞台に輝きつつある室屋。
そして今、室屋成は右サイドバックとしてカタールの地で、大きな存在感を放っている。
グループリーグ初戦の北朝鮮戦でスタメン出場を果たすと、持ち前の運動量と攻守に身体を張れるハードワークを披露し、得意のインターセプトも冴え渡った。90分間、運動量を落とす事も無く1-0の勝利に貢献。
この活躍で手倉森誠監督の信頼を掴むと、続く第2戦のタイ戦ではスタメン出場を果たす。球際の強さや気迫のブロックを見せた。第3戦のサウジアラビア戦こそ、タイ戦で負った怪我の影響により出場しなかったが、堂々たるプレーぶりで、チームの主軸となっている。
彼が感じる世間の評価と自己評価のギャップは、裏を返せば、それだけ日を追うごとに自分の理想が高くなり、それに合わせて着実に成長しているからこそ、自分の現状とその理想の距離感を理解出来ることで、生まれ続けているのであった。