フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
カナダ選手権で「レベルアップを!」。
前“絶対王者”P・チャンの新たな挑戦。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byISU/ISU via Getty Images
posted2016/01/19 10:45
世界選手権3連覇、GPファイナル2連覇(3連覇目は惜しくも3位)、カナダ選手権7連覇、歴代最高得点の前保持者という輝かしい記録を持つチャン。
フリーに4回転を3度がノーマルの時代。
「ジュニアの頃、テレビで(米国の)ティモシー・ゲイブルが4回転を3度成功させたのを見て、すごいなとびっくりしたものでした。でも今は、それがノーマルになりつつある。ジャッジも見慣れてきたというのが、厳しい現実です」
そうチャンも語るように、羽生結弦も、ハビエル・フェルナンデスもフリーでは4回転を3度入れている。ロシアのマキシム・コフトゥンや、コンスタンチン・メンショフらも3回、中国のボーヤン・ジンは4回、フリーで4回転に挑んでくるという恐ろしい時代になってしまった。
もはやチャンも、優れたスケーティング技術に頼っていられる場合ではない。ジャンプのレベルアップをしていかなくては、絶対に勝てないという状況に追い込まれたのである。
数年ぶりにジャンプのレベルアップを試みる。
「GPファイナルでメダルを逃したというのは、本来だったらパニックになってもおかしくない結果だった。でもあの試合ではSPで大失敗をしてしまったし、フリーでは2度目の4回転をやらなかった。だからまだスコアを伸ばせる余地はあると思うんです」
GPファイナルで学んだことについて聞かれると、チャンはそう口にした。
「でも競技レベルはどんどん上がりつつある。技術的なレベルアップは必須だと実感しました」
そうして決めたのが、今シーズンは比較的安定している3アクセルを2度入れることだった。チャンは2010年/2011年シーズンに4回転を入れるようになってから、フリーの3アクセルはずっと1回にしてきた。
「3アクセルをフリーで2度やるのは、数年ぶりのこと。ジャンプのレベルアップをはかるのは、とても久しぶりです。でも今の男子の現実は、それができないのならなぜ競技を続けているんだ、というところにまで来ています」