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ホンダからBMW、そしてスズキ移籍。
清成龍一の不器用なバイクの選び方。 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2016/01/19 10:30

ホンダからBMW、そしてスズキ移籍。清成龍一の不器用なバイクの選び方。<Number Web> photograph by Satoshi Endo

ライダーをめぐる情勢の厳しさを知るからこそ、清成は若手のために率先して行動している。

ホンダ生え抜きライダーの大きな決断。

 その後、格下のアジアロード選手権でチャンピオンになり'13年にはBSBに復帰したが、このシーズンを最後にホンダを去ることになった。'14年はBMWを走らせるプライベートチームに移籍。チャンピオン争いを繰り広げて復活をアピールするも、'15年はマシンのセットアップに苦しんで低迷。不本意なシーズンとなったが、今年はBSBでスズキのナンバーワンチームの「ベネッツ・スズキ」から参戦することが決まった。

 ……と、ここまで駆け足で清成のキャリアを紹介したが、ホンダの生え抜きライダーで日本人初のBSBチャンピオンになり、8耐でもホンダ勢のエースとして参加してきた清成だけに、BMW系のチームに移籍した2年前の決断に驚いた人は多い。

 清成の決断は実にシンプルである。ひとつはレースをしたい。もうひとつはBSBでチャンピオンを獲りたいということ。彼の信条は「言い訳なし」。そのためにトレーニングを欠かさず、常に100%でレースに挑む。ホンダからプライベートチームのBMWへ移籍したのもレースがしたかったからだが、移籍2年目の昨年はマシントラブルが続き、プライベートチームの限界を知った。そこで今年は、早い段階からオファーしてくれたスズキチームへの移籍を決断した。

不器用でも、弱音は吐かない。

 清成は決して器用なライダーではない。というより不器用と言っていい。それでも努力家で、めったなことでは弱音を吐かない。レースへのひたむきな姿勢を思わず応援したくなってしまうライダーでファンも多い。

 数年前からは後輩ライダーたちと一緒にシーズンオフにトレーニングを行なっている。モトクロス用バイクをフラットトラック用に改造して、地元川越市のオフロード施設の整った「オフロードヴィレッジ」で徹底的に走り込んでいる。チームやメーカーの枠を超えて清成の元に集まってくる若手は多く、今年からはトレーニング集団「Team ON」を結成し、自宅を合宿所にして猛トレーニングに励んでいる。ひとりより大勢でトレーニングをした方が楽しいということもあるが、レース界を取り巻く厳しい環境の中で若手たちに走る機会を与えようと頑張っている。

【次ページ】 ホンダを去った真意。

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加藤大治郎
清成龍一

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