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井上尚弥と内山高志、年末の衝撃。
世界最高のボクサーは日本にいる?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2016/01/13 10:40
井上尚弥は現在22歳、ボクサーとしての全盛期はまだまだ先だ。どこまで成長するのだろうか。
ガードの上から効かせる右に会長も呆れ顔。
2回、井上が右を放つ。パレナスはブロックしていたにもかかわらず、これがダメージングブローとなる。フラフラになった挑戦者はこのあと2度のダウンを喫して試合終了。
圧巻である。所属ジムの大橋秀行会長は「ガードの上から効いちゃうなんて、ヘビー級じゃないんだから」とあきれ返るしかなかった。当の本人は「昨年もパーフェクトだったけど、今年もパーフェクトだった」と涼しい顔だ。いったいこの怪物はどのレベルにまで到達してしまうのだろうか。末恐ろしいとはまさにこのことである。
拳の傷も癒えた井上は2016年、さらなる飛躍を志している。プランとしては春に国内で防衛戦をして、年内にアメリカで試合をするというもの。もちろん見据えるのは軽量級最強と言われる3階級制覇王者、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との頂上対決だ。
44戦44勝38KO無敗のゴンサレスは、海外のメディアがこぞって現役ナンバーワン・ボクサーに挙げている。いくら井上が怪物といっても、現時点ではかなわないと見るのが常識である。しかし個人的には、パレナス戦を見て「ゴンサレスに初めて土をつけるのは井上しかいない」との思いを強くした。
年長のゴンサレスが井上戦を急ぐ可能性も?
ゴンサレスも井上を意識し直したのだろうか、年が明けてから海外のメディアに気になる発言をしている。3月にWBC世界フライ級王座の防衛戦をして、その後はクラスを上げてWBC世界スーパーフライ級王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)に挑戦したい、というものだ。いよいよ井上との激突に向け、本気になってきた証とは考えられないだろうか。もし、無敗の世界王者クアドラスとのファイトを井上戦への“肩慣らし”と考えているのだとすれば、それもすごいことである。井上とゴンサレスの一戦はまさに“モンスター対決”と言えるだろう。
大橋会長は「ゴンサレスとやるにはもう少し経験を積んだほうがいい」と語っており、夢対決は即実現というムードではない。ある程度焦らしたほうがファンの興味をより引くという効果もあるだろう。ただし、時間がたてばさらに伸びるのは若いチャンピオンだ。実際に1年のブランクをものともせずに大きな成長を遂げた。そう考えると、ゴンサレスが「今のうちに」と勝負を急ぐ可能性も否定はできないのではないだろうか。ゴンサレスという最高の標的を得て、井上の成長スピードは一段と速まると予想される。