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井上尚弥と内山高志、年末の衝撃。
世界最高のボクサーは日本にいる?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2016/01/13 10:40
井上尚弥は現在22歳、ボクサーとしての全盛期はまだまだ先だ。どこまで成長するのだろうか。
怪我が5年ぶりに完治した内山も完勝。
一方、5年連続して大みそかのリングに立った内山は、世界チャンピオンの中でも御大らしく「さすが」とうならせる隙のないパフォーマンスを披露した。
「すごく調子がよかったので、逆にじっくり、中盤からペースを上げていこうと話していた」
これが試合前のプランだったそうだが、左右の拳、左ヒジのけがに泣かされ続けたスーパー王者が5年ぶりに万全の身体を手に入れたのだ。「じっくりいく」なんてどだい無理な話だった。
瞬く間にオリバー・フローレス(ニカラグア)をコントロールすると「そろそろ下も打とう」と思った3回、コンパクトな左フックを挑戦者のレバーに一閃。フローレスはたちまち悶絶して試合は終わった。結末に驚きは一切なかったが、実力がいま一つのチャレンジャーにダラダラした試合をせず、スパッと終わらせるところに一流のチャンピオンらしさを感じさせた。
内山は、決して相手をインサイドに入れない。
短い試合ながらあらためて感じたのは、内山は対戦相手を絶対にインサイドに入れないことだ。それを可能にしているのは、強靭な肉体と重厚で多彩なジャブである。内山の試合でクリンチは起きないし、ロープに押し込まれたり、乱戦に巻き込まれたりもしない。
それは相手のパンチをもらわない距離とポジションを常にキープしているということでもある。言うは易しで、これを実行するのは難しい。相手のレベルが上がればなおさらだ。内山が一流たるゆえんである。
その内山は11度目の防衛を成功させ、何度も報じられているように、今年は36歳にしてついにアメリカに進出することが決定的だ。ファンの期待とは裏腹に、本人はこれまで米国進出をそれほど強くは主張してこなかったが、やはり世界中から好選手が集まるアメリカへの思いは強かったのだろう。「日本人がダメだと思われるわけにはいかない。(アメリカでの試合は)いいモチベーションになっている。だれとやっても勝つ自信はある」と力強く語っている。