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井上尚弥と内山高志、年末の衝撃。
世界最高のボクサーは日本にいる?

posted2016/01/13 10:40

 
井上尚弥と内山高志、年末の衝撃。世界最高のボクサーは日本にいる?<Number Web> photograph by AFLO

井上尚弥は現在22歳、ボクサーとしての全盛期はまだまだ先だ。どこまで成長するのだろうか。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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 ボクシング界の2015年は恒例の年末世界戦ラッシュで幕を閉じた。東京、名古屋、大阪で計7試合行われた世界タイトルマッチは、IBF世界ミニマム級王者の高山勝成(仲里)が王座から陥落し、3階級制覇を達成した八重樫東(大橋)が新たにIBF世界ライトフライ級王者に輝いた。

 どの試合もそれぞれ興奮があり、味わい深い内容だったが、中でも圧倒的なパフォーマンスを見せたのはWBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(大橋)とWBA世界スーパーフェザー級“スーパー”王者の内山高志(ワタナベ)ではなかっただろうか。日の出の勢いの井上、成熟の境地に達した内山の試合を振り返りながら、両チャンピオンの2016年を占う。

 国内史上最速(当時)となるプロ6戦目で世界タイトルを獲得し、世界最速となる8戦目で2階級制覇を達成した井上。特に2014年の暮れに、オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を2回TKO勝ちで圧倒した一戦は、日本のみならず、海外のメディアがこぞって驚嘆の声を挙げた。プロ8戦目の21歳が、フライ級タイトルを16度、スーパーフライ級タイトルを11度防衛していた歴戦の強者を、赤子の手をひねるように一蹴してしまったのだから、世界中が口をあんぐり開けるのも当然だった。

ブランクもプレッシャーも関係ない圧倒的強さ。

 ただし、プロ9戦目となったワルリト・パレナス(フィリピン)との初防衛戦は「そう簡単にはいかないだろう」と思っていた。ナルバエス戦で右拳を痛めた若き王者は3月に拳を手術。秋までは右を使って練習することができなかったからだ。

 いくら“怪物”のニックネームを持つ井上とはいえ、初めて経験する1年のブランクが試合に影響を与えないはずがない。加えて1年前の試合で、いわば最高得点をたたき出したのだから、世界から注がれる視線はうんとハードルが上がっていた。パレナスの力量を考えれば、負けはないだろう。ただし、長期ブランクと過大なプレッシャーを考えれば、苦戦ないし消化不良の試合は十分にあり得る。私はそう予想していた。

 ところがだ。ふたを開けてみると、ブランクやプレッシャーなど、あまりにも些細な要素に過ぎなかった。1年ぶりに生で観る井上の躍動感は別格だった。異次元という言葉が頭に浮かんだ。リングサイドにへばりつくようになってもう10年以上がたつが、その動きを見ているだけで、これほど圧倒されたボクサーは過去にいなかった。

【次ページ】 ガードの上から効かせる右に会長も呆れ顔。

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