錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

年間21大会で移動距離は地球5周分!
旅人・錦織圭の2015年を振り返る。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiromasa Mano

posted2015/12/27 11:10

年間21大会で移動距離は地球5周分!旅人・錦織圭の2015年を振り返る。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

2015年、オフは2週間だけという日程で戦い続けた錦織圭。

「来年につながるいいシーズン」

 過去、引退した選手の多くは「戦いに疲れた」以上に「旅に疲れた」と言ったものだ。まだ錦織の口からそういった言葉を聞いたことはないが、ツアー全体としても旅の悲壮感が薄れた感があるのは、コミュニケーションツールの発達で、異国での孤独感が多少解消されたせいだろうか。ウィンブルドン5連覇、全仏オープンで4連覇を果たした元王者ビヨン・ボルグが心身ともに疲れ果てて引退したのは、26歳という若さだった。

 その26歳を12月29日に迎える錦織は、誕生日を待たずに2016年シーズン初戦の地、ブリスベンに発つという。24歳にして自分のことを「おじいちゃん」と冗談めかしたのはもう2年近く前のことだが、26歳を迎え、何を思うだろうか。

 全米オープン準優勝などブレーキング・イヤーとなった2014年の翌年に対しては「いろいろな葛藤があることは覚悟していた」という錦織。「その中で戦えたことで気持ちもより強くなったと思うし、2年連続してトップ8で終われたことを思えば、来年につながるいいシーズンだった」と言った。今年味わった手応えも試練も含めての「来年につながる」という言葉はシーズン中に何度か口にしたことだが、シーズン締めくくりとなったツアーファイナルでのロジャー・フェデラーとの一戦によって、その実感レベルはさらにプラスへ傾いたに違いない。

トップはいまだ逞しく、強敵は増えてくる。

 しかし、そうはいっても来年も厳しいシーズンにはなりそうだ。

 11月の『ドリームテニス』で来日した元ウィンブルドン・チャンピオンのゴーラン・イバニセビッチは、錦織とライバル扱いされるマリン・チリッチのコーチでもあるが、そのチリッチと錦織の二人について「来年はよりチャレンジングな年になるだろう」と話した。強敵が増えることを予想してのものだった。自国クロアチアにも19歳のホープ、ボルナ・チョリッチがいるが、そのほかにも期待の若手の名を何人も挙げた。ケガで苦しんだミロシュ・ラオニッチ、そして10代の頃は〈ベイビー・フェデラー〉の異名をとったグリゴール・ディミトロフも実力はこんなものではないと警戒した。

 トップはトップでいまだ逞しく、34歳のフェデラーはウィンブルドン、全米オープン、ツアーファイナルで決勝に進み、その全てでジョコビッチに敗れたものの、グランドスラム以外ではジョコビッチにも3度勝っている。ちなみにジョコビッチは今年合計で6回しか負けていない。2011年も同じく6敗しかしなかったジョコビッチだが、今年を「これまでで最高のシーズン」と位置づけたのは、年々包囲網が厳しくなる中で出した結果だからだろう。

【次ページ】 2016年はオリンピックも。

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