錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
年間21大会で移動距離は地球5周分!
旅人・錦織圭の2015年を振り返る。
posted2015/12/27 11:10
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
以前、テニスの専門誌で、錦織圭が1年間にどれだけ世界を飛び回ったかの地図を作成したことがある。2012年末のことで、そのシーズンは、年初の全豪オープンで当時としてはグランドスラム自己最高となるベスト8入りを果たし、その後に初めてトップ20にも入った躍進の年だった。
クルム伊達公子バージョンとセットにした企画だったが、錦織のほうが手間取った。というのも、毎日のようにブログを更新していたクルム伊達は経由地や移動手段まで事細かく記していたために、それさえチェックすれば完璧なツアーマップが出来上がったのだが、錦織のブログは不定期で、それを見ただけではわからない〈空白の期間〉が何カ所か出てきたからだ。
締め切りのギリギリまで引っ張って、年初の全豪オープンが始まる前にエキシビション大会に出場していた本人に直接確認した。「○○のあとは1度フロリダに戻ったか」とか「○○に行くときに経由したところはどこか」とか、そういう類いのことだ。しかし錦織は、しばし思いを巡らせてはみたものの「すみません、まったく覚えてないです……」と首を振った。結局、「たぶん」という本人のおぼろげな記憶で地図を作成することの了承を得たのが最大の収穫だった。
21大会出場、地球約5周分の移動。
そのように、ややあやふやな部分はあったものの、錦織が1年間に移動した距離は約20万㎞とはじき出された。それは地球5周分に相当することがわかった。2012年の錦織はオリンピックやデビスカップも含めて年間21都市で計55試合を戦っている。
今年は前回のコラムでも触れたように70試合を戦っており、3年前と比べてその数は増えたが、大会数は同じく21。年間に88試合戦ったノバク・ジョコビッチの出場大会数が17であることを考えれば、本来この距離は実力とともに短くなるべきだが、錦織にとって全体の移動距離に大きな変動はなく、長い旅の連続だった。
年に1、2回程度の思い出深い海外旅行なら事細かに行動を覚えているかもしれないが、これだけ動いているのだからいちいち覚えていないのは無理もない。年間21大会という転戦は、地球5周分の移動によってつながれていることをあらためて考えれば、テニスプレーヤーのタフな日常がより鮮明に浮かび上がる。