プロ野球亭日乗BACK NUMBER
韓国に敗れた侍ジャパンの根本命題。
先発エースと強打者を揃えた「副作用」。
posted2015/11/20 12:10
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
最後は打たれるべくして、打たれた。
1点差となった9回表無死満塁。マウンドの増井浩俊投手(日本ハム)には、もはや奔流となった韓国の勢いを止めるだけの力はなかった。
「カウントが悪くなって厳しいところに投げられなかった……」
韓国の4番打者イ・デホ(ソフトバンク)に対して2ボール1ストライクとバッティングカウントにしたところで、甘いフォークを左翼線に運ばれた。2人の走者が次々とホームを駆け抜けて、プレミア12初代王者への道は閉ざされた。
詰め掛けた4万人を越える大観衆の前で惨劇は始まった。
開幕の韓国戦に続いて先発した大谷翔平投手(日本ハム)が、7回まで1安打11奪三振の快投を見せ、打線も4回に敵失を絡めて3点を先制した。その勢いを信じて小久保裕紀監督が継投に入ったのは8回からだった。
「大谷は6、7回であとは則本(昂大投手、楽天)でいくと決めていた。大谷が7回まで投げてくれたことで、残り2回は則本と決めていた」
指揮官は説明した。
則本に託すのは用意された切り札だったが……。
もちろんこの判断には誤りはない。
この大会でリリーフに回っていた則本は、ロングリリーフも含めて大事な場面での登板というジョーカー的な役割を任された切り札だった。その起用に応えて、開幕の韓国戦でも大谷のあとを受けて2回を無失点。米国戦でも菅野智之投手(巨人)が不振とみるや5回から投入されて、ここでも2回を無失点に抑えている。
一戦必勝となるトーナメントに入った準々決勝でも、先発の前田健太投手(広島)の2番手として1回を無失点に抑えてきた。
クローザーとして考えていた松井裕樹投手(楽天)と澤村拓一投手(巨人)が、投球内容にやや不安な面をのぞかせていた部分もあったので、「最後を則本に託す」という決断は、実は準々決勝を終えた時点で小久保監督の頭に描かれていた勝負手だったのだ。