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前田健太とポスティングの行方。
~大物投手が続々とFA権獲得~
posted2015/11/21 10:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
前田健太が〈プレミア12〉の準々決勝、対プエルトリコ戦(11月16日)で好投した。
相手に大リーガーがいないのだから割り引かなければならないが、7回を投げて被安打4、奪三振7、無失点、無四球という内容は十分に評価できる。超絶的に速い球は投げられなくても、制球力と投球術はいますぐ大リーグで戦えるレベルだと思う。
〈プレミア12〉の決勝が終われば、たぶん広島カープは、前田のポスティングを発表すると思う。2013年以降の制度改定で、ポスティング・フィーの上限は2000万ドルとなっている。この金額なら、複数の球団が入札に参加するだろう。確実なのはダイヤモンドバックスだが、先発投手が欲しい球団は他にいくつもある。ヤンキース、ドジャース、レッドソックス、カブス、ジャイアンツあたりが首を突っ込んでくる可能性もないとはいえない。
11~12勝、防御率3点台が前田のノルマ。
ダイヤモンドバックスは、かなり前から前田への興味を表明している。GMのデイヴ・スチュワートがぞっこんなのだ。なるほど、アスレティックスのエースだったころ('87~'90年)のスチュワートの投球を思い出すと、前田に惚れ込む理由もわからなくはない。球速は同じくらいだが、前田のスライダーはスチュワートより切れるし、気の強さでも優っている。スチュワートには使い減りしないワーキング・ホースのイメージが強かった。
メディアのFA選手ランキングを見ても、前田の評価はかなり高い。ティム・ディアケスは、ウェイ・イン・チェン(中日→オリオールズ。今季FA)と前田を同等に評価している(チェンが13位で前田が14位)し、米国内の選手に限定したベン・ライターのトップ50を見ても、チェンのランクは14位だ。
年俸に換算すると5年総額6000万ドル(約75億円)といったところか。譲渡金2000万ドルを含めると、チェンやジェフ・サマージャやマイク・リークとほぼ同レベルの値札(5年総額8000万ドル)がつけられることが予想される。年齢(前田が'88年生まれで、リークが'87年生まれ)や身体のサイズ(前田が182センチ/81キロで、リークが178センチ/86キロ)やピッチングスタイル(制球力にすぐれ、与四球が少ない。ただし、前田のほうが三振を取れる)からいっても、当面の基準はリークになるだろう。つまり要求されているのは、11~12勝、防御率が3点台中盤というレベルで、前田の能力ならクリアするのはむずかしくないと思う。