プロ野球亭日乗BACK NUMBER
超攻撃的野球と無失点の中継ぎ陣。
侍ジャパン、あとは松井裕樹だけ。
posted2015/11/16 12:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
その瞬間にフッとラグビーワールドカップのエディージャパン対南アフリカ戦を思い出した。
3点ビハインドの試合終了間際。ゴール前3メートルの地点で相手の反則を得た日本はショットではなくスクラムを選択した。
引き分けではなく、あくまで勝利にこだわったその作戦が、結果的にはノーサイド直前の劇的なトライを生み出したわけである。
常道であればあの場面では、ショットを選択するだろう。相手はワールドカップで優勝経験のある南アフリカである。引き分けでも大金星の番狂わせと言われたはずだった。それでも「同点じゃなく、勝ちに行く気持ちだった。みんなも同じだった」(リーチ・マイケル主将)と、あくまで勝利を目指した。そのチャレンジャー精神が日本ラグビーの歴史を変え、エディージャパンの快進撃は始まったわけである。
1点ビハインドの9回裏に選んだ強攻策。
そのシーンを思い出したのは、1次リーグ最終戦となったベネズエラ戦だった。1点ビハインドの9回に先頭の今宮健太内野手(ソフトバンク)が右前打で出塁、1番の秋山翔吾外野手(西武)を打席に迎えた場面だった。
まず同点狙いで送りバントが常識的な采配だが、小久保裕紀監督の選択はあくまで勝利に向けてのものだった。
打席はヒットメーカーの秋山。しかも左打ちで、よっぽど野手の正面を突かなければ併殺の可能性も低い。何より、すでに1次リーグのトップ通過は決めている。そうした状況判断の上で強攻策を選択したことが、大会2度目のサヨナラ勝ちへの導火線となった。
結果的には秋山が死球でチャンスを広げて無死一、二塁とすると、2番の中島卓也内野手(日本ハム)が今度は確実に送りバントを決めて二、三塁、ベネズエラベンチは満塁策を選択したが、4番・川端慎吾内野手(ヤクルト)への初球に暴投が出て、まずは同点となった。そして再び満塁策。しかも今度は中堅手を二塁ベース付近に配した内野手5人のシフトをかいくぐって、中村晃外野手(ソフトバンク)が左前にゴロで抜けるサヨナラ安打を決めた。