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中田翔のバットと言葉が日本を救った!
WBC王者ドミニカ戦は堅守で辛勝。
posted2015/11/13 12:15
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
NIKKAN SPORTS
また中田である。
2対2の同点に追いつかれた直後の8回2死二、三塁だった。150キロ越えのドミニカ共和国の快速右腕・デヘスス投手にあっさり追い込まれたカウント1ボール2ストライクからの5球目。中田翔内野手(日本ハム)はフォークに少しタイミングをずらされながらも、二枚腰の粘りでボールを捉えて、痛烈な打球で三塁線を破った。
「同点に追いつかれてソワソワしている中、点を取りたかった。いいところに飛んでくれた。体勢を崩されたが、しっかり粘れたと思う」
2点タイムリー二塁打。勝ち越しを確認した中田は、二塁で両手を叩いてガッツポーズを繰り返した。
この日も終盤の同点劇はまたもミスがきっかけだった。
日本が2点をリードした7回。先頭の7番・エルナンデス外野手の打球は平凡な左翼へのフライだった。ところが目測を誤った筒香嘉智外野手(DeNA)がこれを安打にしたのをきっかけに、1死後に2番手の小川泰弘投手(ヤクルト)が、ドミニカの9番打者・ロドリゲス内野手に2ランを浴びた。
言葉とバットでチームを救った中田。
意気消沈でベンチに戻った筒香に、真っ先に声をかけたのが中田だったという。
「気にするな。切り替えていけ」
日本に比べるとかなり暗い台湾のスタジアム。そこで高く上がった打球は一瞬、筒香の視界から消えてしまった。
「あの打球は高く上がったし、難しさはよくわかる。なんとかしてあげたい気持ちがすごくあったので(打てて)良かったですね」
前日のメキシコ戦でのサヨナラ打に続きチームを救う連夜のひと振りに、小久保裕紀監督も「中田さまさまですね。昨日、今日と、打線は彼に救われた。筒香は照明の暗さの中で目測を誤ったが、彼も救われたと思う」と、味方のミスを救う主軸の働きを絶賛した。