リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
ペップ、エンリケの大のお気に入り。
バルサでセルジ・ロベルトが開花。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2015/11/12 10:30
カタルーニャ出身の23歳は、バルセロナのまさに王道を歩いてきた期待の星だ。
エンリケのオフィスで伝えられたコンバート。
そこでルイス・エンリケのオフィスのドアをノックした。すると――。
「僕を信頼してるって。シャビがいなくなったこともあるし、出番は昨季より増えるだろうって言われた」
ただし、アウベスを休ませるための右サイドバックとして。
セルジ・ロベルトは戸惑いながらも前向きに捉えた。
「バルサBではピボーテもやったし、ユースの頃はセンターフォワードもやったけれど、サイドバックは一度も……。でも嫌いなポジションじゃないし、僕の望みは試合に出てチームの力になることだから」
とはいえルイス・エンリケも、思いつきで口にしたわけではない。自身センターフォワードからサイドバックまでこなした彼はセルジ・ロベルトの適性を早くに見抜き、昨季のうちからコンバートを考えていたのだ。
果たして開幕節、負傷したアウベスに替わってピッチに立ったセルジ・ロベルトは、予想と期待を越えるプレイで役割を全うした。
第2節のマラガ戦後、監督は手放しで“息子”を褒め称えている。
「今日初めてセルジ・ロベルトを見たソシオがいたら、『こいつはサイドバック一筋の選手に違いない』と思ったはず。あのポジションをあのレベルでこなすことができるのは頭の良い選手だけだ」
内気で恥ずかしがりの青年が、自信を得た。
現役のとき、クライフの“ドリームチーム”でやはり中盤からサイドバックにコンバートされた経験を持つエウセビオも、ルイス・エンリケの判断を肯定的に見ている。
「サイドバックでの起用は正解だと思った。昨季まで、中盤ではいつも自分を抑えている感じがあったからね。彼には気性の荒さがない。あまりにも良いヤツなんだ」
実際、カンテラ時代の評判を考えると、ここ2シーズンのセルジ・ロベルトは影が薄かった。なにしろ内気で恥ずかしがりの青年だ。自分を出す勇気と自信がなかったのかもしれない。
しかし、いまは違う。カンプノウの観客に認められたことによって一皮剥けたのだろう。本来の存在感が自陣ゴール前から敵陣ゴール前までを、右のサイドラインから左のラインまでを、くまなくカバーし始めている。彼が出すパスはバルサのチャンスメイクに欠かせないものになりつつある。
来るクラシコで、ルイス・エンリケはボール支配率を高めにいくという見方がある。
その場合、手段は中盤の人数を増やし、サイドを広く使うこと。となると、インテリオールか右サイドバックどちらで使われたとしても、セルジ・ロベルトは作戦成功のカギを握る。