フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
カナダGPは波乱のち、名演技続出。
チャンが優勝、羽生も6位から挽回。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2015/11/03 11:00
フリーで驚異的挽回を見せた羽生。歴代のSP最高得点記録は羽生、フリーの記録はチャンが持つ……名勝負はこれからも続く。
羽生はまさかの70点台。
昨年に続いてショパンの『バラード』で滑りはじめた羽生は、出だしの3アクセルがきれいにきまった。スピンも快調にこなしていったが、後半で挑んだ4トウループが、するりと抜けて2回転に。公式練習でも見せたことのない失敗だった。
最後のジャンプエレメントでは、3ルッツを着氷したが、続くトウループが2回転になった。全体的に見て、4回転以外はそれほど悪い印象の演技ではなかったが、73.25という予想外に低いスコアが出た。その理由は4回転の予定だった2回転トウループと、ルッツの後につけた2回転トウループが重複してルール違反となったこと、このどちらもノーカウントになってしまったからだった。
彼がソチオリンピックで出したISU歴代最高スコアは101.45。それを30ポイント近く下回るというショッキングなスコアで、12人中6位になった羽生。当然、SP後の会見には来ない。報道陣はトップ3の会見もそっちのけで、慌ててミックスゾーンに集合した。
「体の状態は悪くなかった」
汗を流しながら現れた羽生は、まだ腑に落ちない表情をしていた。
「まだ頭の整理ができていない。アクセルはきまっているので体の状態は悪くない。ただダブル重複(のルール)がちゃんと頭に入っていなかったのは、自分の一番悪かったところです」
パトリックの存在を意識したかと聞かれると、こう答えた。
「やる前にパトリックの点数はわかっていました。靴履くときにすごい歓声が聞こえてきて、100点くらい出たのかなと思ったら80点だったので、大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせました」
もう一度SPを滑れるくらい体は疲れておらず、朝からよく動いていたという。失敗の原因を考えるので精いっぱいで、スコアが予想外に低かったことまで頭が回っていない、と苦笑いをした。
「でもトップとの点差は7点しかない。フリーは全力で頑張ります」と言葉を結んだ。
結局SPは、冒頭の4サルコウで手をついたが残りはノーミスだった村上大介が80.88でトップにたち、2位がチャン、そしてアダム・リッポンが80.36で3位。世界トップクラスの男子の戦いとしては驚くほど低いスコアが並び、波乱万丈の幕開けとなった。