マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
2位の意外な顔ぶれと“一芸”指名。
2015年、ドラフトは新たな時代に。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/10/28 10:50
甲子園で清宮幸太郎と並ぶスターになったオコエ瑠偉。この太腿は、いやがおうにも期待をそそる。
関係者に電話で伝えるスカウトの姿が語るもの。
ドラフト指名が進んでいく会場の外で、指名した選手、関係者に電話でそれを伝えるスカウトたちの姿があった。
紅潮した横顔。人の一生を左右する“瞬間”を伝える一種厳粛なまでの表情。2年、3年とその成長を見つめ続け、そして今日、ドラフト指名にこぎつけた者としての喜びに、指名を伝える声がわずかに震える。
その一角、あるスカウトが放心したように壁にもたれて立っている。
「指名できました。よかった……ほんとによかった。あいつならだいじょうぶです。体は細いですが、気持ちはしっかりできている。練習が休みの日だって、こっそり見に行ってみると、一人で練習やってました。あの体で、投げれば140出せる。センスだって抜群です。ピッチャーが評判でしたけど、私、見ていたのは彼のほうです。試合に部長を連れて行ったのも、こっちのほうを見せるためでしたから」
よかった……ほんと、よかった……。
ぎゅっと目を閉じて、絞り出すようにそう言うと、ひとつ大きく、ア~アと伸びをしてみせた。
果たせた安堵、託す思い、そして希望。
スカウトたちの“今年”が終わり、指名された選手たちの“未来”が始まった。