野球善哉BACK NUMBER
巨人を支える控え選手の充実度。
CSに見る原監督のマネジメント力。
posted2015/10/13 16:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
NIKKAN SPORTS
「2WAYで準備していました」
その言葉に、今の巨人の強さを感じずにはいられなかった。
CSファーストステージの第1戦で勝利を挙げた時のことだ。
10回裏1死満塁。打順が投手の澤村拓一に回ってきた場面で、原辰徳監督が代打に送ったのは高橋由伸だった。実は、前の打者・亀井善行が四球を選ぶまで、ネクストバッターズサークルにいたのはレスリー・アンダーソンだった。「2死ならアンダーソン、1死満塁なら高橋」と原監督は二段構えで用意していたというのだ。
1死満塁という、押し出し四球もあり得る状況下では、悪球打ちが長所であり短所であるアンダーソンよりも、冷静沈着に勝負ができる高橋由伸の方がこの場に適している。指揮官は、より確実さを求めて、勝負に打って出たのだった。
結果は押し出し四球。巨人がサヨナラ勝ちした。端から見れば、阪神の投手・高宮和也の乱調に見えたかもしれないが、したたかな指揮官の采配の妙が試合を分けたことを忘れてはいけない。
控え選手の「準備力」。
今季の巨人を振り返ると、バックアップメンバーの強さに唸らされる。
チームの主力は、主砲の阿部慎之助、キャプテンの坂本勇人、主軸を打つ長野久義、投手陣ではエースの菅野智之や澤村拓一だが、後ろに控えるバックアップの強さが、今季、投打ともに調子がなかなか上がらなかったチームを支えている。
当然、第二次政権10年目になる原監督の熟練の采配があってこそバックアップが生きるのだが、常に出番を想定しながら備える控えの選手たちの「準備力」に、強さを感じるのだ。
「僕はずっと原監督の下でやってきているので、どういう展開になれば自分の出番になるか、という流れは読めるようになってきています。また、一緒にいる控えメンバーとも、この展開はこうなったら出番だよねって、話し合ったりしていますね。野球は何通りにでも展開するので、その場面を想定しながらいつも準備をしています」
そう話したのは、代走・守備交代要員など様々な形で起用されることが多い寺内崇幸である。今季はけがの影響で離脱期間が長かったが、最後に間に合わせてきた。「僕はけがのこともあるので早めに準備しますが、状況を見ながら、それぞれが試合に出た時にできるプレーを最善にするための準備をしていると思います」とベンチに控えるバックアップメンバーの心構えについて話している。