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バイエルンに大敗はむしろ好都合?
ドルトムントの王座奪還は長期計画。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/10/05 16:00
バイエルンに惨敗したドルトムントと香川真司。しかし、彼らの復活への道は始まったばかりなのだ。
深い位置に下がったボアテンクを掴まえきれず。
さらにその8分後には、昨季以来ドルトムントが課題としているカウンターからピンチを招き、エリア内でチアゴを倒してPKを与えてしまう。これをミュラーに決められて、2-0。
繰り出した奇策がバイエルンに対策されてしまい、トゥヘルはやむなく普段の4-3-3へ戻す。しかしこれがはまり、カストロのクロスにオーバメヤンがあわせてゴール。一度は2-1とした。
もっとも、今度はバイエルンが3-4-3から4-2-3-1へと布陣を変更して、ドルトムントにさらに対応。これでドルトムントの反撃ムードは沈静化する。
そして後半1分、またもやボアテンクがバイエルン陣内の深い位置からドルトムントのDFラインめがけてボールを送った。ボアテンクがかなり低い位置にいたこともあり、プレスはかかっていなかった。
しかもドルトムントの“急造”DFラインのコントロールはお粗末で、それにつられて中途半端に飛び出したGKビュルキがまたもやボールをクリアできず。レバンドフスキにこのボールをけり込まれて、決定的な3点目が生まれて試合の行方は決まったのだった。
今季のドルトムントは、とにかく時間がない。
この失点には、2つのポイントがある。
ドルトムントの戦い方をみてすぐに修正を指示したグアルディオラの手腕と、それを実行するバイエルンの選手たちの能力の高さが1つ。
もう1つが、練習時間の少なさに起因するドルトムントの準備不足だ。トゥヘルが今季から就任したばかりにもかかわらず、彼らはドイツのどのチームよりも早く今シーズンの戦いをスタートさせなければいけなかった。7月30日のEL予備予選3回戦が今季初の公式戦となった彼らが、ここまでの試合で取り組んできたのは引いた相手を崩す戦いだった。
8月のELプレーオフが終わった時点でも、他のチームよりも試合数が圧倒的に多かったため、それ以外の戦術に手を付けられなかった。バイエルン戦に用いた布陣についても、試したのはボーフム戦以来だし、この試合の3日前にはギリシャでELのナイトゲームを行なっている。実際にピッチで練習をする時間はほとんどなかったはずだ。
必要な準備のなかには、本職がボランチであるベンダーに、ディフェンダーとしての経験を積ませられなかったことも含まれる。