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男子バレー代表、まさかの会場満員!?
若いエースと爽快な試合が面白い。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2015/09/16 11:20
エジプト戦では八面六臂の活躍を見せた石川も、アメリカ戦では輝けず。格上との戦いでこそ真価が問われる。
遊び感覚が引き出した質の高い攻撃力。
5試合を終えて、スパイク決定率54.87%でベストスパイカーランキング6位に名を連ねる。
初戦の活躍があまりに鮮烈だったため、2日目以降、相手チームは徹底的にサーブで石川を狙って攻撃力を封じようとしているが、その中でこの数字を残している。
身長191cmは、スパイカーとしては世界の中では小柄だ。しかもまだ代表2年目の19歳。
その選手がなぜ、国際大会でここまで活躍できるのだろうか。
その理由の一端は、引き出しの多さと、遊び心にある。
日本人選手は、特に学生時代からエースと呼ばれて育った選手は、どこか生真面目で、高さやパワーを武器に真っ向勝負にこだわる傾向があった。
すると世界に出た時、必ず壁にぶつかり、そこでようやく、引き出しを増やす必要性に気づく。
石川も、星城高時代に2年連続高校三冠(インターハイ、国体、春の高校バレー)を達成したエースだったが、もともと持っている引き出しが非常に多い。
小中学生の頃は飛び抜けて大きな選手ではなかったため、自分より高いブロックを相手にどうやってスパイクを決めるか、工夫を凝らし、技術を磨いたことが活きている。
そしてこの2年、代表で海外遠征に行ったり、イタリア・セリエAのモデナに約3カ月間所属したことで、それぞれの引き出しを対世界用に調整することができた。
加えて、石川はいい意味で、遊び感覚でプレーしているところがある。以前、こんなふうに話していた。
「やっぱり余裕を持つのは大切だと思います」
「自分を上げるためだったり、いいものを引き出すためには、“遊び”も大事なのかなと思う。“遊び”って言い方は、全日本ではあまりいい言い方じゃないのかもしれないけど、やっぱり余裕を持つのは大切だと思います」
無垢な顔でいながら、頭の中では冷静に、ここを抜いてやろう、こうしたら相手は嫌だろうな、という引き出しを開ける。
例えば微妙にタイミングを遅らせて打つなど、多くの選択肢の中から最適な一手を選び、それを正確に実行する技術と、判断する“間”を与えるだけの滞空力があるからできることでもある。
第4戦のカナダ戦、満員となった観客の前で白星を挙げた石川は、「わ、今日は人いるなーって感じでした(笑)。すごく、思ったよりもいい感じで来ているので、チームとして自信になっていると思います」と心地良さそうに話した。この舞台を純粋に楽しんでいる。
ただ、今大会の全日本男子が見る人を惹きつけているのは、爽やかな若手選手の活躍だけでなく、チームの戦い方にも要因があるのではないだろうか。