サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本代表の連係が機能しない理由。
本田圭佑が語る、クラブとの“齟齬”。
posted2015/09/05 10:50
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Takuya Sugiyama
本田圭佑の左足から放たれた強烈ミドル。ここ最近の日本代表が抱えていた鬱憤を晴らすような一撃だった。
守備を固めてきた相手に有効打となる、ミドルシュート。6月のシンガポール戦でスコアレスとなった反省を生かすために、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督もカンボジア戦を前に「ミドルシュートをもっと打つことが必要」というメッセージを選手にも世間にも伝えていた。
この試合、日本は序盤から攻めるもゴールネットを揺らせないまま、前半も30分を迎えようとしていた。そこで、本田が相手の虚を突くように左足を強振。指揮官が求めたプレーで、しっかり結果を出す。誰よりも真っ先に決めてみせたあたりは、さすがの役者ぶりだった。
ミドルが決まる確率は、当然低い。
ミドルシュートやロングシュートが決まる確率は、ペナルティエリア内から放たれたシュートよりも当然低い。重心が引いた守備組織に長いレンジのシュートが有効な理由は、そのシュートをブロックするべく少しでも相手の守備ラインを前方に向かわせられるから。それによって今度は敵の背後のスペースが生じ、そこを攻撃で突くことが最終的な狙いでもある。
カンボジア戦のように3得点中2得点がミドルシュートから生まれるのは、サッカーにおいては珍しい事態だ。本来は、よりゴールに近い距離からシュートを打ってこそ、ゴールを重ねることができる。実際日本も、そのようなシーンを前後半ともに作っていった。しかし、香川真司が簡単なシュートを決められず、武藤嘉紀は好機を逸し、岡崎慎司も不発に終わった。
何より、狭いエリアでの技術ミスが多く目についた。パスがずれる、トラップが大きくなる、シュートも力んでゴールの枠を外れる。肝心な場面でそうしたプレーが続出し、チャンスをフイにしていった。
確かに、カンボジアは自陣ペナルティエリア内に8~9人が戻り、日本の前に立ちはだかっていた。ただ、一人ひとりの守備の耐久力が高いかと言えば、そうでもない。人はたくさんいるが、決してタフな組織ではない。その間隙を縫っていくような日本の選手の連係が見たかった。