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巨人4連覇へラストピースは大竹寛!
不振の2年目を「勝負と雪辱の9月」に。
posted2015/09/01 10:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
ノーヒットノーランがあるかもしれない――。それはまさに、球場全体を味方につけたような投球だった。
8月29日の中日戦。7回を無失点に抑え、今季2勝目をマークした巨人・大竹寛のパフォーマンスは、それほど圧巻だった。
初回のファインプレー。それが、大竹が思い描くシナリオを具現化させてくれた。
1番・大島洋平の三塁線へのライナーを、サードの村田修一がダイビングキャッチ。
「あれは大きかったです」と胸をなでおろした大竹は、完全に自分の領域を作ることができた。
「一人ひとり丁寧に打ち取ろう」
大竹らしい打たせて取る投球はもちろん、イニング間でも、相手打者がコールされ打席に向かおうとしてもなお、投球練習を続ける余裕を見せていた。大竹が自身の投球を振り返る。
「基本は真っ直ぐでした。ファウルや空振りを取るのはもちろんですけど、自分のなかではストライクゾーンで勝負しにいくことが大事だと思って。投げるときは、しっかりと低めで勝負できたのがよかったです」
多彩な球種の中で、一番生きたのはカーブ。
この日のストレートの最速は146キロと威力は抜群だった。変化球にしても「まずまずコントロールできていたと思います」と及第点をつけたように、得意ボールのシュート、スライダーのコンビネーションも光った。そして、従来のウイニングショットであるチェンジアップ、春先から習得に励んでいるフォークも効果的に織り交ぜることができた。
なかでも、この日、中日打線を手玉に取れた最大の要因はカーブだった。
例えば、冒頭に挙げた大島との対決である。
3球目にカーブを投げたことが伏線となり、ほんの少しタイミングを崩すことができた。結果論かもしれないが、それが村田のファインプレーを呼び込んだと言える。この打席以外にも左打者の森野将彦や亀澤恭平に対して、初球にカーブを投じることで打ち気をそらすことができた。
「カーブがいいところに決まるとやっぱりいいんで。カウントによってうまく使い分けることができたと思います」