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「Noch mehr!」という叫びの意味は?
3戦連続得点、香川真司好調の理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/08/28 17:10
この日1点目のゴールをアシストしたギンターに飛びついて喜ぶ香川真司。今季はここまで絶好調、クラブもリーグで首位に立っている。
昨年はプレッシャーだったホームが、今は嬉しい。
一秒でも長くボールを蹴っていたい。
そんなサッカーを始めたばかりの少年が抱くような想いを、香川は今も持ち続けている。そして、そう思えるだけの可能性を、現在のドルトムントのサッカーに見出している。
ホームゲーム一つとってみてもそうだ。昨シーズンは、とりわけリーグ戦では引いた相手に苦しんでいた。決定力不足と相手のカウンターにおびえ、ホームでの試合を「プレッシャーがハンパなかった」と香川は振り返る。でも、今は違う。
「ホームでやる試合に関してすごく楽しみだったし、嬉しさを感じながら今はプレー出来ていますね」
もっとも、楽しさを見出すだけではピッチには立ち続けられない。では現在の香川は、どうしてスタメンの一員として送り出され、長い時間にわたってプレーする機会を与えられているのだろうか。
そのヒントは、この試合でドルトムントが挙げた3つのゴールシーンからくっきりと浮かび上がる。
香川がムヒタリアンのために作った一瞬の間。
印象的だったのは前半25分、ムヒタリアンの同点ゴールにつながるシーンだ。フンメルスから左FWのムヒタリアンへパスが出る。ペナルティエリアの手前でこのアルメニア代表FWがパスを受けると、香川はその外側を全速力でかけぬけた。そして、この動きに相手の右サイドバックのフルメが一瞬だけ引きずられた。
好調のムヒタリアンにとっては、その一瞬の間だけで十分だった。他のディフェンダーがカバーに入る前に、右足から勢いよく蹴りだされたボールは、ほどなくしてゴール右隅に突き刺さっていた。この1点を皮切りに、ドルトムントのゴールラッシュが始まる。
香川はあの場面についてこう振り返った。
「“おとり”じゃないけど、3人目の動きだったり、ボールを持っている選手をどんどん追い越して、味方のサポートに行くのは自分の良さでもある。良い距離感でやれているからそういう動きにつながっていると思うのでね」