世界陸上PRESSBACK NUMBER
2915日後に立ったTVの“向こう側”。
やり投げ・新井涼平が世界陸上で9位。
text by
宝田将志Shoji Takarada
photograph byAFLO
posted2015/08/27 11:30
昨年はアジア大会で銀メダルを獲得し、日本歴代2位の記録も出した新井涼平。世界陸上でリオ五輪の内定を取ることは叶わなかったが、彼が日本のエースであることは間違いない。
「練習する才能。13時から24時までやっている日もある」
3年で全国高校総体4位など実績を作り、国士舘大学に進んだ。スカウトした岡田雅次監督は、こう当時を振り返る。
「記録的には大したことなかったし、無茶苦茶な投げだったけど、動き、体にキレがあった。そういう、教えても出来ないものを持っていた」
そして、大学で実際に指導するようになり、新井の類い稀な資質を目の当たりにする。
「練習する才能。13時から24時までやっている日もあるくらい。何であんなに集中力がもつのか、同じことを真面目にできるのか。腹筋だけで2時間とかやってますからね」
地力を徐々に蓄え、'09年世界選手権銅メダリストの村上幸史(スズキ浜松AC)、同学年で'12年ロンドン五輪代表のディーン元気(ミズノ)に次ぐ「第3の男」と認められるようになると、社会人1年目の昨年、国民体育大会で日本歴代2位となる86m83を投げ、一気に日本のエースに登り詰めた。
ぶっつけ本番の日本選手権で代表をつかみ、世界陸上へ。
期待された今季はしかし、苦しいスタートだった。
「技術を新しく変えようと思ったことがあったんですけど、それを急いでやってしまって」
冬期練習で、やりに伝える力を高めようとリリースの瞬間に体を前にきゅっと縮めるような動きを試した。ほどなく腰と左脇腹、左足首が悲鳴をあげた。ウェイトトレーニングどころか、ジョギングも出来なくなってしまった時期もある。
そのまま2月の南アフリカ合宿に飛んだが、痛んだ体は内臓も弱っており、「最後はクッキーくらいしか食べられなくなった」。3週間の滞在予定を2週間で切り上げて帰国。通常93kgの体重は5kgも落ちていた。
投擲の精度を上げる作業に再び取り組み始めたのは、故障も癒え、ほぼぶっつけ本番だった6月の日本選手権で代表切符をつかんでからである。
「今できる力を出したい。世界陸上はやり投げを始めたきっかけだし、不甲斐ない試合はしたくない」
体の「面」が前に潰れたり開いたりせず、しっかり正面にして投げられるよう修正したという。